JSBSimで飛行機のシミュレーションをしたいけれど、XMLファイルの複雑さに躊躇していませんか?JSBSim XML Generatorを使えば、Excelの簡単な入力だけで、本格的な航空機モデルXMLを自動生成できます。
この記事では、ツールのインストールからXML生成まで、たった5分で完了できる手順を解説します。手順通りに進めれば、初めての方でも確実に動かせます。
この記事で学べること#
- JSBSim XML Generatorのインストール方法(pip install、1分)
- サンプル機体Excelの取得と確認方法(1分)
- コマンド1行でXMLを生成する方法(1分)
- 生成されたXMLファイルの確認方法(1分)
- よくある躓きポイントと解決策(1分)
対象読者#
この記事は、以下のような方を対象としています:
- JSBSim XML Generatorを初めて使う方
- とにかく動かして結果を見たい方
- 手順通りに進めたい初心者の方
- RC飛行機のシミュレーションに興味がある方
前提条件#
始める前に、以下の環境を確認してください:
必要な環境#
- Python: バージョン3.7以上(推奨: 3.10以上)
- OS: Windows, Mac, Linux すべて対応
- 必要な知識: コマンドライン操作の基本(
cd,ls等) - 所要時間: 約5分
Pythonバージョンの確認#
ターミナル(Windows: コマンドプロンプトまたはPowerShell、Mac/Linux: ターミナル)で以下のコマンドを実行してください:
python --versionまたは
python3 --versionPython 3.7.0以上のバージョンが表示されればOKです。3.7未満の場合は、Pythonのアップデートをおすすめします。
参考: Python公式サイト - Pythonのインストールおよびバージョン確認方法
ステップ1: JSBSim XML Generatorのインストール#
それでは、ツールをインストールしましょう。pipコマンド1行で完了します。
1.1. インストールコマンドを実行#
ターミナルで以下のコマンドを実行してください:
pip install jsbsim-xml-generatorまたは(環境によって):
pip3 install jsbsim-xml-generatorインストールは約30秒で完了します。依存パッケージ(lxml, pandas, openpyxl等)も自動的にインストールされます。
1.2. インストール確認#
インストールが完了したら、以下のコマンドでバージョンを確認してください:
jsbsim-xml-generator --versionバージョン番号(例: 0.1.0)が表示されれば、インストール成功です。
出典: JSBSim XML Generator - MIT License
ステップ2: サンプル機体Excelの取得#
次に、サンプル機体のExcelファイルを取得します。このファイルには、200g級RC固定翼機のパラメータがすでに入力されています。
2.1. サンプルファイルのダウンロード#
以下のいずれかの方法でサンプルファイルを取得してください:
方法1: GitHubからZIPダウンロード(推奨)#
- JSBSim XML Generator GitHubにアクセス
- 緑色の「Code」ボタンをクリック → 「Download ZIP」
- ZIPを解凍
examples/sample_aircraft.xlsxを確認
方法2: git cloneでリポジトリ全体を取得#
git clone https://github.com/Yaaasoh/jsbsim-xml-generator.git
cd jsbsim-xml-generator/examples2.2. サンプル機体の内容確認#
sample_aircraft.xlsxをExcelまたはLibreOffice Calcで開いてください。以下のような内容が入力されています:
- 機体諸元: 翼幅、翼面積、翼弦長、重量、重心位置
- 空力係数: 揚力係数(CL)、抗力係数(CD)、モーメント係数(Cm)
- 推進系: プロペラ直径、ピッチ、エンジン推力
- 操舵面: エルロン、エレベータ、ラダーの設定
これらのパラメータがすべて設定済みなので、すぐにXML生成できます。各パラメータの詳細な意味は、後の記事で解説します。
出典: JSBSim XML Generator examples/ - MIT License
ステップ3: XML生成(コマンド実行)#
いよいよXMLを生成します。コマンド1行で完了します。
3.1. コマンド実行#
ターミナルで、sample_aircraft.xlsxが保存されているディレクトリに移動してください:
cd /path/to/jsbsim-xml-generator/examples(/path/to/は実際のパスに置き換えてください)
次に、以下のコマンドを実行してください:
jsbsim-xml-generator --input sample_aircraft.xlsx --output sample_aircraft.xml実行時間は1-2秒です。
3.2. コマンドオプション解説#
--input: 入力Excelファイルのパス--output: 出力XMLファイルのパス(指定しない場合はoutput.xml)--trim: トリム探索を実行(オプション、詳細はA-4記事で解説)
3.3. 実行ログの確認#
コマンドを実行すると、以下のようなログが表示されます:
Reading Excel file: sample_aircraft.xlsx
Parsing aircraft parameters...
Generating JSBSim XML...
XML generated successfully: sample_aircraft.xml「successfully」と表示されれば、XML生成成功です。
出典: JSBSim XML Generator README.md - MIT License
ステップ4: 出力XMLの確認#
生成されたXMLファイルを確認しましょう。
4.1. XMLファイルを開く#
テキストエディタ(VS Code, Sublime Text, Notepad++等)でsample_aircraft.xmlを開いてください。
以下のようなJSBSim XML形式の機体定義ファイルが生成されています:
<?xml version="1.0"?>
<fdm_config name="sample_aircraft" version="2.0" release="BETA">
<fileheader>
<author>JSBSim XML Generator</author>
<filecreationdate>2025-10-20</filecreationdate>
<description>200g class RC UAV</description>
</fileheader>
<metrics>
<wingspan unit="M"> 0.80 </wingspan>
<wingarea unit="M2"> 0.16 </wingarea>
<chord unit="M"> 0.20 </chord>
...
</metrics>
<mass_balance>
<ixx unit="KG*M2"> 0.0012 </ixx>
<iyy unit="KG*M2"> 0.0020 </iyy>
...
</mass_balance>
<aerodynamics>
<axis name="LIFT">
<function name="aero/force/Lift_alpha">
...
</function>
</axis>
...
</aerodynamics>
...
</fdm_config>4.2. 主要セクションの確認#
生成されたXMLには以下のセクションが含まれています:
<metrics>: 機体諸元(翼幅、翼面積、翼弦長等)<mass_balance>: 重量・重心位置・慣性モーメント<aerodynamics>: 空力特性(揚力、抗力、モーメント)<propulsion>: 推進系(エンジン、プロペラ)<flight_control>: 操縦系(エルロン、エレベータ、ラダー)
これらはすべて、ExcelファイルのパラメータからXML Generatorが自動生成したものです。
4.3. 次のステップ#
このXMLファイルをJSBSimやFlightGearで読み込めば、飛行シミュレーションを実行できます。詳細は以下の記事で解説します:
- JSBSim XMLをFlightGearで飛ばす方法 - 自作機体の可視化と飛行テスト
参考: JSBSim Reference Manual, Chapter 5 “Aircraft Configuration File”, p. 25-50 (Public Domain)
よくある躓きポイントと解決策#
初めて使う方が躓きやすいポイントとその解決策を紹介します。
問題1: command not found: jsbsim-xml-generator#
症状: コマンドを実行すると「command not found」と表示される
原因: pipインストール後、PATHが反映されていない
解決策:
# ターミナルを再起動する、または
python -m jsbsim_xml_generator --helppython -mを使えば、PATHを経由せず直接実行できます。
問題2: ModuleNotFoundError: No module named 'lxml'#
症状: コマンド実行時に依存パッケージのエラーが出る
原因: 依存パッケージが正しくインストールされていない
解決策:
pip install lxml pandas openpyxl依存パッケージを手動でインストールしてください。
問題3: Excelファイルが開けない(FileNotFoundError)#
症状: FileNotFoundError: [Errno 2] No such file or directory: 'sample_aircraft.xlsx'
原因: ファイルパスが間違っている、またはカレントディレクトリが異なる
解決策:
# カレントディレクトリを確認
pwd # Mac/Linux
cd # Windows
# ファイルの存在を確認
ls sample_aircraft.xlsx # Mac/Linux
dir sample_aircraft.xlsx # Windows
# 絶対パスで指定
jsbsim-xml-generator --input /full/path/to/sample_aircraft.xlsx --output output.xml問題4: XML生成エラー(ValueError, KeyError等)#
症状: Excel読み込み後、XML生成時にエラーが出る
原因: Excelファイルのフォーマットが正しくない(セルの値が不正、範囲外等)
解決策:
- サンプルファイルをそのまま使用(改変しない)
- エラーメッセージを確認し、どのパラメータが問題かを特定
- 詳細なトラブルシューティングは A-5記事: よくあるエラーと解決方法 を参照
この知識をツールで活用する#
おめでとうございます!クイックスタートを完了したあなたは、JSBSim XML Generatorの基本操作をマスターしました。
たった5分で、以下を達成しました:
- ✅ ツールのインストール
- ✅ サンプル機体Excelの確認
- ✅ コマンド1行でのXML生成
- ✅ 生成されたXMLファイルの確認
次は、自分の機体のパラメータを入力してXMLを生成してみましょう。
おすすめの次のステップ#
- ツールの価値を深く理解する → JSBSim XML Generator - なぜExcelから始めるべきか
- Excel入力テンプレートの詳細を学ぶ → Excel入力テンプレート完全ガイド
- 自分の機体の諸元を測定する → 自分の機体の諸元を測定する方法
- 実機データからXML生成する → 200g級RC機をモデル化する全手順
- FlightGearで飛行テストする → JSBSim XMLをFlightGearで飛ばす方法
すべてのステップで、このクイックスタートで学んだ基本操作が土台になります。
次のステップ#
この記事を読んだ後は、以下の記事もおすすめです:
- JSBSim XML Generator - なぜExcelから始めるべきか - ツールの価値と従来の方法との比較
- Excel入力テンプレート完全ガイド - 各パラメータの意味と設定方法
- 200g級RC機をモデル化する全手順 - 実機データからXML生成まで実践
- JSBSimとは?初心者向け完全ガイド - JSBSimの全体像を理解
- FlightGearとは?初心者向け完全ガイド - 可視化環境の準備
参照資料#
本記事の執筆にあたり、以下の資料を参照しました:
公式ドキュメント#
Python公式サイト - Public Domain
- Pythonバージョン確認、インストール方法
JSBSim Reference Manual - Public Domain
- Chapter 5 “Aircraft Configuration File”, p. 25-50 - JSBSim XML構造の参照
オープンソースプロジェクト#
- JSBSim XML Generator - MIT License
- ツールのインストール手順、コマンドラインオプション、サンプル機体ファイル(examples/sample_aircraft.xlsx)
この記事がお役に立ちましたか? GitHubリポジトリでフィードバックをお待ちしています。
© 2025 Yaaasoh. All Rights Reserved.
本記事の著作権はYaaasohに帰属します。引用部分については各引用元のライセンスが適用されます。