テーマ2-1:衛星光通信を活用したデータ中継サービスの実現に向けた研究開発・実証
テーマID: theme2_1
カテゴリ: 衛星等(第二期)
作成日: 2025-10-22
テーマ2-1:衛星光通信を活用したデータ中継サービスの実現に向けた研究開発・実証
概要
地球観測衛星の画像データが大容量化し、リアルタイム送信の需要が急速に拡大しています。しかし、低軌道衛星は地上との位置関係により伝送時間等に制約が生じるため、静止軌道衛星を活用したデータ中継が有望な手法として注目されています。
国際的には複数の事業者がデータ中継サービスの提供を検討しており、国内企業による実現は成長市場の確保と、宇宙空間における情報の流通を我が国として管理する観点からも重要な課題となっています。
また、周波数資源がひっ迫する中、国際周波数調整を行うことなく高速・大容量通信が可能な光通信技術が注目を集めています。本テーマでは、衛星光通信を活用した商用データ中継サービスの実現を目指し、必要な技術開発を支援します。
技術開発の内容
本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:
1. 衛星光通信技術の確立
静止軌道衛星と低軌道衛星間の商用利用が可能な衛星光通信技術の確立を支援します。具体的には以下の技術が含まれます:
- 光通信端末の開発:静止軌道と低軌道間で高速・大容量通信を実現する光通信端末
- 捕捉・追尾・通信(ATP)技術:衛星間での精密な光ビーム制御技術
- 高感度受信技術:長距離光通信に対応する高感度受信システム
- 通信プロトコル最適化:衛星間通信に適した通信プロトコルの開発
2. ネットワーク制御・監視システム
データ中継衛星の運用に必要なネットワークの制御及び監視システムの開発を支援します:
- ネットワーク管理システム:複数の衛星を統合管理するシステム
- 通信リソース割当最適化:効率的なデータ中継を実現するスケジューリング技術
- リアルタイム監視機能:通信状態の常時監視と異常検知
- 障害対応自動化:障害発生時の自動復旧機能
3. 商用サービス実証
実際の地球観測衛星とのデータ中継サービス実証を通じて、商用化に向けた技術検証を行います:
- エンドツーエンド通信試験:地上局から低軌道衛星、データ中継衛星を経由した一連の通信試験
- 大容量データ伝送試験:実際の観測データを用いた大容量データ伝送の検証
- サービス品質(QoS)評価:商用サービスに求められる通信品質の達成確認
- 運用シナリオ検証:実運用を想定した運用手順の確立
期待される効果
本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:
宇宙産業の競争力強化
- 国内企業による商用データ中継サービスの実現
- 成長市場における国際競争力の確保
- 衛星コンステレーション事業者への安定的なサービス提供
地球観測データの利活用促進
- リアルタイムでの大容量データ取得
- 災害監視・環境監視の高度化
- 新たな衛星データ利用サービスの創出
我が国の宇宙空間利用の自律性確保
- 宇宙空間における情報流通の管理
- 周波数資源の有効活用
- 国際周波数調整の負担軽減
公募情報
公募スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年6月27日 |
| 応募締切 | 2025年8月21日(正午) |
| 一次審査(書面) | 2025年9月~10月上旬 |
| 二次審査(ヒアリング) | 2025年10月中旬~11月中旬 |
| 採択決定 | 2025年11月下旬~12月頃 |
応募要件
必須要件
- e-Radの機関・研究者登録が完了していること
- 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
- 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
- 商用サービス実現に向けた具体的な事業計画を有すること
実施体制要件
- 衛星光通信技術及びネットワーク制御技術の知見・技術開発実績を有すること
- データ中継サービスの顧客候補(地球観測衛星事業者等)との連携体制
- 商用サービス実現に向けた資金調達計画
- 国際標準化活動への参画体制
審査基準
主な審査・評価の観点:
- 技術開発の実現可能性
– 衛星光通信技術の技術成熟度(TRL)と開発計画の妥当性
– ネットワーク制御・監視システムの実現可能性
– 実証計画の具体性と達成可能性
- 事業の持続性・市場性
– 商用サービスの市場規模と収益見通し
– 顧客候補との契約・協議状況
– 国際競争環境における差別化戦略
– 民間資金調達の見通しと経営者のコミットメント
- 実施体制・マネジメント
– 衛星光通信及びネットワーク技術の専門性
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– 衛星製造事業者、地上局運用事業者等との連携体制
- 我が国の宇宙産業への貢献
– 国内宇宙産業の競争力強化への貢献度
– 宇宙空間における情報流通管理への貢献
– 周波数資源の有効活用への貢献
技術的課題と留意点
本テーマの技術開発においては、以下の点に留意が必要です:
衛星光通信の技術的課題
- 長距離光通信:静止軌道-低軌道間(約36,000km)での安定した光通信実現
- 高精度ポインティング:数μrad(マイクロラジアン)レベルの精密な光ビーム制御
- 大気擾乱の影響:地上局との通信における大気揺らぎの補償
- 衛星間相対運動:低軌道衛星の高速移動に追従する捕捉・追尾技術
システム開発の課題
- 運用自動化:24時間365日の安定運用を実現する自動化技術
- 障害対応:通信断などの障害発生時の迅速な復旧手順
- セキュリティ:通信データの暗号化と不正アクセス防止
- 国際標準化:国際的な衛星光通信標準への適合
事業化の課題
- 初期投資回収:静止軌道衛星打上げ等の大規模初期投資の回収計画
- 顧客獲得:地球観測衛星事業者との契約獲得
- 国際競争:海外事業者との差別化と競争優位性の確保
- 規制対応:電波法、宇宙活動法等の関連法規制への適合
関連情報
国際的な動向
海外の商用データ中継サービス
- 欧州宇宙機関(ESA):EDRS(European Data Relay System)によるレーザー通信データ中継サービスを運用中
- 米国:SpaceX社のStarlinkなど、衛星コンステレーション事業者がレーザー通信を活用
- 中国:天链(Tianlian)衛星システムによるデータ中継サービスを展開
国内の関連技術開発
JAXA等による技術開発実績
- 光データ中継技術(LUCAS):JAXA技術試験衛星での衛星光通信実証
- ETS-IX(きく9号):光衛星間通信技術の軌道上実証
- 光地上局ネットワーク:国内複数地点での光地上局整備
関連資料
まとめ
テーマ2-1「衛星光通信を活用したデータ中継サービスの実現に向けた研究開発・実証」は、地球観測データのリアルタイム送信需要の増加に対応し、国内企業による商用データ中継サービスの実現を目指す重要なテーマです。
静止軌道衛星と低軌道衛星間の衛星光通信技術の確立と、ネットワーク制御・監視システムの開発により、国際競争力のある商用サービスの創出が期待されます。
応募締切は2025年8月21日(正午)です。衛星光通信技術やネットワーク制御技術の知見を有し、商用サービス実現に向けた具体的な事業計画をお持ちの企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。


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