テーマ2-8:次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術

テーマ2-8:次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術

テーマID: theme2_8
カテゴリ: 衛星等(第二期)
作成日: 2025-10-22

テーマ2-8:次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術

概要

ロケット打上げコストの低減等に伴い、商業地球観測衛星のトレンドとして、衛星の観測機能の高度化によって衛星データ・サービスを差別化し、ユーザーニーズへの対応力を強化することが求められています。

現状では、事業基盤の強化のみならず、技術力向上に向けた研究開発を絶やさず実施し、技術基盤を強化していくことが重要とされています。しかし、次世代の衛星システム・センサに求められる機能向上には、挑戦的かつ中長期的な取組が必要となる技術開発が不可欠です。

本テーマでは、ユーザーニーズを踏まえて現状ボトルネックとなっている技術的課題を打破するため、次世代の衛星システム・センサに求められる機能向上のための技術開発・実証を支援し、民間企業の技術基盤強化を推進します。

技術開発の内容

本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:

1. 高分解能観測技術

より詳細な地球観測を実現する技術を開発します:

超高分解能光学センサー

  • 大口径光学系:50cm級以上の大口径望遠鏡技術
  • 高精度姿勢制御:μrad(マイクロラジアン)レベルの指向精度
  • 焦点面検出器:高画素・高感度センサー技術
  • 像劣化補正:大気擾乱・振動の影響補正技術

合成開口レーダー(SAR)高度化

  • 高分解能化:X帯・Ku帯による1m以下の分解能
  • 偏波SAR:多偏波観測による情報量増大
  • 干渉SAR:地表変動のmm単位計測
  • 広域観測:広い観測幅と高分解能の両立

ハイパースペクトルセンサー

  • 多波長観測:数百バンドの波長帯同時観測
  • 高スペクトル分解能:物質識別精度の向上
  • データ圧縮技術:大容量データの効率的伝送
  • オンボード処理:衛星上でのデータ解析
2. 高頻度観測技術

同一地点の観測頻度を高める技術を開発します:

コンステレーション技術

  • 複数衛星協調:多数の小型衛星による高頻度カバレッジ
  • 軌道最適設計:観測頻度最大化の軌道配置
  • 衛星間通信:コンステレーション内のデータ共有
  • 統合運用:複数衛星の一体的管制

機動的観測技術

  • 高速姿勢変更:目標の迅速な捕捉
  • 軌道機動能力:観測対象への軌道調整
  • 予測観測:AIによる観測対象の予測と事前準備
  • 緊急観測対応:災害等の緊急観測要求への即応

長時間観測技術

  • 静止軌道観測:連続的な同一地域監視
  • 高軌道配置:広域・長時間観測の実現
  • 省電力設計:長時間運用を支える電力システム
  • 高耐久性:長期運用に耐える信頼性
3. 多様なセンサー統合技術

複数種類のセンサーを統合し、より豊富な情報を取得する技術を開発します:

マルチセンサー統合

  • 光学・SAR統合:昼夜・全天候観測の実現
  • 能動・受動センサー統合:相補的な情報取得
  • 異種データ融合:複数センサーデータの統合解析
  • 同時観測設計:複数センサーの協調観測

新規センサー開発

  • LiDARセンサー:3次元地形計測
  • 熱赤外センサー:地表温度の高精度計測
  • マイクロ波放射計:土壌水分・海面塩分観測
  • 大気センサー:温室効果ガス等の観測

センサー小型化

  • MEMS技術活用:センサーの超小型化
  • 集積化技術:複数機能の統合
  • 低消費電力化:小型衛星への搭載実現
  • 量産化技術:コスト削減
4. データ処理高度化技術

取得したデータから高度な情報を抽出する技術を開発します:

オンボードAI処理

  • 画像認識AI:衛星上での対象物自動検出
  • 変化検知:リアルタイムでの地表変化検出
  • 異常検知:災害等の異常事象の自動検出
  • 優先度判断:重要データの優先送信

高速データ伝送

  • 光通信技術:Gbps級の高速データ伝送
  • データ圧縮:効率的なデータ圧縮技術
  • データ中継:静止軌道衛星経由の高速伝送
  • 地上局ネットワーク:複数地上局での受信最適化

地上データ処理

  • 自動処理パイプライン:取得から解析までの自動化
  • ビッグデータ解析:大量データの高速処理
  • 機械学習活用:AIによる高度な情報抽出
  • 時系列解析:過去データとの比較分析
5. 新規観測ニーズ対応技術

新たな観測ニーズに対応する技術を開発します:

気候変動観測

  • 温室効果ガス観測:CO2・メタン等の高精度計測
  • 植生モニタリング:森林変化・農業生産性評価
  • 海洋観測:海面温度・海流・海氷観測
  • 極域観測:氷床変動・永久凍土監視

災害監視

  • 即時観測:災害発生直後の緊急観測
  • 浸水域把握:洪水被害の迅速な把握
  • 地殻変動:地震・火山活動の監視
  • 土砂災害予測:地形変化の継続監視

インフラ監視

  • 構造物変位計測:橋梁・ダム等のmm単位変位検出
  • 農地モニタリング:作物生育状況の把握
  • 都市開発監視:都市変化の定量的把握
  • 違法伐採検知:森林違法伐採の監視

期待される効果

本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:

衛星データサービスの高度化
  • 高分解能・高頻度観測によるサービス品質向上
  • 新規観測ニーズへの対応
  • ユーザー満足度の向上
  • 国際競争力のあるサービス提供
新規市場の創出
  • 新たな衛星データ利用サービスの開拓
  • インフラ監視・農業・防災等の市場拡大
  • データ販売収益の増大
  • 関連産業の成長
技術基盤の強化
  • 民間企業の技術力向上
  • 国際的な技術競争力の獲得
  • 技術の自律性確保
  • 継続的なイノベーション創出

公募情報

公募スケジュール

項目 日程
公募開始 2025年8月8日
公募締切 2025年10月16日(正午)
一次審査(書面) 2025年10月下旬~12月上旬
二次審査(ヒアリング) 2025年12月中旬~2026年2月上旬
審査結果通知 2026年2月頃

応募要件

必須要件

  • e-Radの機関・研究者登録が完了していること
  • 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
  • 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
  • 地球観測衛星技術の知見を有すること

実施体制要件

  • 地球観測センサーまたは衛星システムの開発実績を有すること
  • 挑戦的な技術開発を推進できる体制
  • ユーザーニーズを把握する仕組み
  • 商用サービス化に向けた事業計画

審査基準

主な審査・評価の観点:

  • 技術開発の実現可能性

– 開発技術の技術成熟度と開発計画の妥当性
– 技術的ボトルネックの明確化と解決方法
– 実証計画の具体性

  • ユーザーニーズへの対応

– 明確なユーザーニーズの把握
– 開発技術によるニーズ充足度
– 市場規模と収益見通し

  • 技術基盤強化への貢献

– 民間企業の技術力向上効果
– 国際競争力強化への貢献
– 技術の波及効果

  • 実施体制・マネジメント

– 地球観測技術の専門性と実績
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– ユーザー・事業者との連携体制

関連情報

国内外の動向

海外の商業地球観測衛星

  • Planet社(米国):200機以上の小型衛星コンステレーション
  • Maxar社(米国):30cm級高分解能光学衛星
  • ICEYE社(フィンランド):SAR衛星コンステレーション

国内の取り組み

  • Synspective社:SAR衛星コンステレーション
  • QPS研究所:小型SAR衛星
  • アクセルスペース社:光学衛星コンステレーション

関連資料

まとめ

テーマ2-8「次世代地球観測衛星に向けた観測機能高度化技術」は、ユーザーニーズに対応した観測機能の高度化により、衛星データサービスの差別化と民間企業の技術基盤強化を目指す重要なテーマです。

高分解能・高頻度観測、多様なセンサー統合、データ処理高度化などの技術開発により、国際競争力のある衛星データサービスの提供と新規市場の創出が期待されます。

応募締切は2025年10月16日(正午)です。地球観測衛星技術の専門知識を有し、挑戦的な技術開発に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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