テーマ2-10:空間自在移動の実現に向けた技術

テーマ2-10:空間自在移動の実現に向けた技術

テーマID: theme2_10
カテゴリ: 衛星等(第二期)
作成日: 2025-10-22

テーマ2-10:空間自在移動の実現に向けた技術

概要

宇宙空間における自在な移動を実現するためには、高い輸送コストや推進系等の開発難易度、及びこれらに起因する技術実証サイクルの停滞がボトルネックとなっています。静止軌道や月近傍市場は2030年には約1兆円規模に達すると予測されており、これらの市場への効率的なアクセス手段の確立が急務です。

本テーマでは、軌道間輸送機(OTV)の開発、軌道上燃料補給技術、宇宙ロジスティクス研究の3つの統合的な技術領域を支援し、静止軌道以遠への多軌道輸送とインフラ展開を実現する再使用可能な宇宙機の開発を推進します。

技術開発の内容

本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:

1. 軌道間輸送機(OTV)開発技術

複数の軌道間を自在に移動できる輸送機の開発を支援します:

再使用型OTV技術

  • 高効率推進系:電気推進・化学推進のハイブリッド推進システム
  • 長期運用設計:繰り返し使用に耐える耐久性
  • 自律航行制御:無人での軌道間移動制御
  • ドッキング技術:衛星・デブリとの自動ドッキング

マルチミッション対応

  • 衛星配備:複数衛星の各軌道への配置
  • 衛星回収:寿命を迎えた衛星の回収
  • デブリ除去:スペースデブリの除去・軌道変更
  • 軌道間輸送:低軌道から静止軌道・月軌道への輸送

モジュール設計

  • ペイロード交換:ミッションに応じた機器交換
  • 燃料タンク増設:長距離ミッション対応
  • 推進系交換:用途別の推進系選択
  • 標準化インターフェース:汎用性の高い接続規格
2. 軌道上燃料補給技術

宇宙空間での燃料補給を実現する技術を開発します:

燃料移送システム

  • 自動ドッキング:補給機とOTVの自動接続
  • 推進剤移送:無重力環境での液体推進剤移送
  • 漏洩防止技術:確実なシール・接続技術
  • 残量計測:正確な燃料残量モニタリング

補給方式

  • タンク充填方式:直接タンクに燃料を充填
  • カートリッジ交換方式:燃料カートリッジの交換
  • 標準化インターフェース:複数OTVに対応可能な接続規格
  • 安全機構:異常時の緊急遮断システム

補給デポ技術

  • 燃料貯蔵技術:長期間の燃料保存
  • 軌道配置最適化:複数OTVへの効率的補給
  • 燃料管理システム:在庫管理と配分最適化
  • 太陽光発電:デポ運用のためのエネルギー供給
3. 宇宙ロジスティクス研究

効率的な宇宙輸送システムを設計する研究を実施します:

ロジスティクスアーキテクチャ設計

  • OTVネットワーク最適化:複数OTVの最適配置と運用
  • 補給デポ配置:燃料デポの最適軌道配置
  • 輸送ルート最適化:燃費・時間を考慮した経路設計
  • 需要予測:将来の輸送需要の予測

シミュレーション技術

  • 軌道力学シミュレーション:複雑な軌道間移動の計算
  • 経済性評価:コスト・収益の定量的評価
  • リスク分析:運用リスクの評価と対策
  • シナリオ分析:複数の運用シナリオの比較

運用システム設計

  • 統合管制システム:複数OTVの一元管理
  • スケジューリング:輸送ミッションの最適スケジュール
  • 緊急対応:異常時の対処手順
  • 保守計画:OTVのメンテナンススケジュール
4. 推進系技術

高性能な推進システムを開発します:

電気推進技術

  • ホールスラスター:高比推力推進
  • イオンエンジン:長時間運用対応
  • PPT(パルスプラズマスラスター):小型衛星用推進
  • 高出力化:推力増大による移動時間短縮

化学推進技術

  • 双推進剤推進:高推力推進
  • グリーン推進剤:低毒性推進剤の活用
  • 推力制御:精密な推力調整機能
  • 再着火性能:複数回のエンジン起動

ハイブリッド推進

  • 電気・化学統合:両方式の長所を活用
  • モード切替:ミッションフェーズに応じた切替
  • 燃料共用化:両推進系での燃料共用
  • 最適制御:状況に応じた推進系選択
5. 自律制御技術

無人での安全な運用を実現する制御技術を開発します:

ランデブー・ドッキング

  • 相対航法:目標衛星との相対位置・速度測定
  • 接近制御:安全な接近軌道の生成
  • 姿勢制御:ドッキング時の姿勢維持
  • 衝突回避:異常時の自動回避

異常検知・対処

  • 故障診断:システム異常の自動検知
  • セーフモード:異常時の安全な待機状態
  • 自律復旧:可能な範囲での自動復旧
  • 地上通信:異常情報の自動送信

AI活用

  • 軌道計画自動生成:AIによる最適軌道計算
  • 障害物回避:デブリ等の自動回避
  • 燃料消費最適化:AIによる燃費最適化
  • 意思決定支援:運用判断の支援

期待される効果

本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:

宇宙輸送コストの大幅削減
  • 再使用型OTVによる輸送コスト低減
  • 燃料補給による打上げ質量削減
  • 複数衛星の効率的配備
  • ミッション柔軟性の向上
新規市場の開拓
  • 静止軌道・月近傍市場へのアクセス
  • デブリ除去サービス
  • 衛星サービシング事業
  • 宇宙インフラ構築
技術基盤の強化
  • OTV技術の確立
  • 軌道上サービシング技術の獲得
  • 国際競争力の向上
  • 宇宙産業の成長

公募情報

公募スケジュール

項目 日程
公募開始 2025年8月8日
公募締切 2025年10月9日(正午)
一次審査(書面) 2025年10月中旬~11月中旬
二次審査(ヒアリング) 2025年11月中旬~12月中旬
結果発表 2025年12月下旬~2026年1月

応募要件

必須要件

  • e-Radの機関・研究者登録が完了していること
  • 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
  • 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
  • OTV開発、燃料補給技術、またはロジスティクス研究のいずれかの専門性を有すること

実施体制要件

  • 宇宙機開発または推進系技術の実績を有すること
  • 軌道力学・制御技術の専門知識
  • 実証試験を実施可能な体制(A・B)またはシミュレーション環境(C)
  • 商用化に向けた事業計画

審査基準

主な審査・評価の観点:

  • 技術開発の実現可能性

– 開発技術の技術成熟度と開発計画の妥当性
– ボトルネック解消への貢献
– 実証計画の具体性

  • 市場性・事業性

– 静止軌道・月近傍市場への貢献
– ビジネスモデルの妥当性
– 収益見通しと投資回収計画

  • 統合性・相乗効果

– A・B・C技術領域の統合効果
– 他プロジェクトとの連携可能性
– 宇宙インフラ構築への貢献

  • 実施体制・マネジメント

– 宇宙機開発・推進系技術の専門性
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– 関連事業者との連携体制

関連情報

国内外の動向

海外のOTV開発

  • Northrop Grumman(米国):Mission Extension Vehicle (MEV)
  • Astroscale(日本):デブリ除去・衛星サービシング
  • Momentus(米国):水推進OTV開発

軌道上サービシング

  • NASA:Restore-L(燃料補給実証)
  • ESA:ClearSpace-1(デブリ除去)

関連資料

まとめ

テーマ2-10「空間自在移動の実現に向けた技術」は、軌道間輸送機、軌道上燃料補給、宇宙ロジスティクスの統合的な技術開発により、宇宙空間での自在な移動を実現する重要なテーマです。

再使用型OTV、燃料補給システム、最適ロジスティクス設計の開発により、宇宙輸送コストの大幅削減と新規市場の開拓が期待されます。

応募締切は2025年10月9日(正午)です。宇宙機開発・推進系技術の専門知識を有し、空間自在移動の実現に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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