テーマ2-20:高頻度打上げに資するロケット製造プロセスの刷新
テーマID: theme2_20
カテゴリ: 宇宙輸送(第二期)
作成日: 2025-10-22
テーマ2-20:高頻度打上げに資するロケット製造プロセスの刷新
概要
衛星コンステレーション構築の急速な進展により、世界的にロケット打上げ需要が急増しています。しかし、国内の年間打上げ機数は10機未満にとどまり、この供給不足により国内衛星事業者が海外ロケットに依存せざるを得ない状況が続いています。この問題は単なる打上げ回数の不足ではなく、ロケット製造プロセスの根本的な課題に起因しています。
現在のロケット製造は、大型部品の難加工・特殊加工に多大な時間と費用を要し、組立作業も人手に大きく依存しているため、生産性向上の限界に直面しています。さらに、各ロケット事業者が個別に製造プロセスを最適化してきた結果、サプライチェーン全体としての効率化が進んでいません。
本テーマでは、新加工技術の導入による大型部品加工の効率化、ロボット等による組立作業の自動化、複数ロケット共用の試験装置開発を通じて、ロケット製造プロセスを刷新し、国内ロケット産業の国際競争力のある宇宙輸送システム構築と、サプライチェーン全体の生産性向上を実現します。
技術開発の内容
本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:
1. 大型部品加工技術の革新
ロケットタンク等の大型部品製造の効率化を実現します:
新加工技術の導入
- 高速切削技術:アルミ合金大型タンクの加工時間短縮
- 複合加工機:多軸制御による複雑形状の一括加工
- 積層造形(3Dプリント):複雑形状部品の直接製造
- 摩擦攪拌接合(FSW):高品質な溶接代替技術
難加工材料対応
- CFRP加工技術:炭素繊維複合材の高精度加工
- チタン合金加工:高強度材料の効率的加工
- 超耐熱合金加工:エンジン部品の高度加工
- 工具寿命延長:加工コスト削減
大型部品ハンドリング
- 自動搬送システム:重量物の安全な移動
- 精密位置決め:大型部品の高精度組立
- 変形制御:加工・搬送時の変形最小化
- 計測システム:大型部品の高精度寸法測定
2. 組立作業の自動化
人手に依存する組立工程を自動化します:
ロボット組立システム
- 協働ロボット活用:人と協働する安全なロボット
- 大型部材組立:ロボットによる重量物組立
- 自動ボルト締結:多数のボルトの自動締付
- 配管・配線自動化:複雑な配管・配線の自動施工
位置合わせ・接合技術
- レーザー計測:部品位置の高精度測定
- 自動位置補正:ロボットによる位置合わせ
- 自動溶接:一貫した品質の溶接
- 接着技術:軽量化に寄与する接着接合
検査・品質管理の自動化
- 画像認識検査:AIによる外観検査自動化
- 非破壊検査自動化:超音波・X線検査の自動化
- 寸法測定自動化:3Dスキャナーによる全数検査
- データ記録自動化:トレーサビリティ確保
3. 試験装置の共用化・自動化
複数ロケットで共用可能な試験システムを開発します:
汎用試験装置開発
- 可変試験治具:多様なロケット形状への対応
- 自動プログラム切替:ロケット種類に応じた自動設定
- 標準インターフェース:各社ロケットとの接続共通化
- 試験設備の柔軟性:様々な試験要求への対応
試験の効率化
- 試験時間短縮:並列試験・連続試験の実現
- 自動データ取得:試験データの自動記録・解析
- リモート試験:遠隔からの試験実施
- 試験結果の即時解析:AIによる異常検知
試験コスト削減
- 設備稼働率向上:複数事業者での共用
- 保守コスト削減:予防保全による故障低減
- 試験スケジュール最適化:効率的な試験スケジューリング
- 試験省略化:データ蓄積に基づく試験合理化
4. デジタル製造基盤
製造プロセス全体のデジタル化を推進します:
デジタルツイン構築
- 製造工程シミュレーション:事前の工程検証
- 作業計画最適化:最短工程の自動計算
- バーチャル試作:物理試作回数の削減
- 工程改善支援:ボトルネック発見と改善
製造データ活用
- 工程管理システム:リアルタイムな進捗管理
- 品質データ蓄積:不良原因の分析と対策
- AI活用:製造条件の最適化
- 予知保全:設備故障の事前予測
サプライチェーン連携
- 情報共有プラットフォーム:部品メーカーとの連携
- 在庫最適化:ジャストインタイム生産
- 納期管理:サプライチェーン全体の納期可視化
- 品質情報共有:部品品質のトレーサビリティ
5. サプライチェーン強化
ロケット産業のサプライチェーン全体を強化します:
部品メーカー支援
- 製造技術移転:先進製造技術の展開
- 設備投資支援:自動化設備導入の支援
- 品質管理向上:品質管理手法の指導
- 人材育成:技術者のスキルアップ支援
標準化推進
- 部品標準化:共通部品の採用拡大
- インターフェース標準化:組立性向上
- 試験規格統一:試験の効率化
- データ形式統一:情報連携の円滑化
国内調達拡大
- 新規サプライヤー開拓:参入障壁の低減
- 部品国産化:海外依存からの脱却
- 中小企業参入支援:裾野産業の拡大
- 地域産業活性化:地方への波及効果
期待される効果
本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:
生産性の大幅向上
- 製造リードタイムの短縮
- 製造コストの削減
- 品質の安定化
- 年間打上げ機数の増加
国際競争力の強化
- 打上げ価格の低減
- 短納期での対応
- 高品質・高信頼性
- 世界市場でのシェア獲得
サプライチェーンの強靱化
- 国内調達率の向上
- 部品メーカーの技術力向上
- 安定供給体制の構築
- 産業基盤の強化
公募情報
公募スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年6月13日 |
| 公募締切 | 2025年8月21日(正午) |
| 一次審査(書面) | 2025年8月下旬~10月下旬 |
| 二次審査(ヒアリング) | 2025年10月下旬~11月下旬 |
| 結果通知・発表 | 2025年12月頃 |
応募要件
必須要件
- e-Radの機関・研究者登録が完了していること
- 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
- 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
- ロケット製造または先進製造技術の知見を有すること
実施体制要件
- ロケット製造または機械加工の実績を有すること
- 自動化技術・ロボット技術の専門知識
- ロケット事業者との連携体制
- サプライチェーン全体への波及を考慮した計画
審査基準
主な審査・評価の観点:
- 技術開発の実現可能性
– 開発技術の技術成熟度と開発計画の妥当性
– 製造工程への適用可能性
– 実証計画の具体性
- 生産性向上効果
– リードタイム短縮効果の定量評価
– コスト削減効果
– 品質向上効果
- 波及効果
– サプライチェーン全体への貢献
– 複数ロケットへの適用可能性
– 産業基盤強化への効果
- 実施体制・マネジメント
– ロケット製造・先進製造技術の専門性
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– ロケット事業者・部品メーカーとの連携体制
関連情報
国内外の動向
海外の製造革新
- SpaceX(米国):高度に自動化された製造ライン
- Blue Origin(米国):積層造形技術の活用
- Rocket Lab(米国/NZ):小型ロケットの高頻度製造
国内の取り組み
- 各ロケット事業者:製造効率化への取組
- 関連メーカー:自動化技術の開発
関連資料
まとめ
テーマ2-20「高頻度打上げに資するロケット製造プロセスの刷新」は、新加工技術、組立自動化、試験装置共用化により、ロケット製造の生産性を大幅に向上させ、国内ロケット産業の国際競争力を強化する重要なテーマです。
大型部品加工の効率化、ロボット組立、デジタル製造基盤の構築により、製造リードタイムとコストの大幅削減が実現し、年間打上げ機数の増加と国内サプライチェーンの強靱化が期待されます。
応募締切は2025年8月21日(正午)です。ロケット製造技術や先進製造技術の専門知識を有し、製造プロセス革新に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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