テーマ2-21:射場における高頻度打上げに資する汎用設備フィージビリティスタディ
テーマID: theme2_21
カテゴリ: 宇宙輸送(第二期)
作成日: 2025-10-22
テーマ2-21:射場における高頻度打上げに資する汎用設備フィージビリティスタディ
概要
国内のロケット打上げ機数は年間10機未満にとどまり、急増する衛星コンステレーション需要に対応できていません。この供給不足の一因として、各ロケット事業者がロケット仕様の違いに応じて個別に射場設備・治工具を開発する必要があり、開発期間の長期化と経済的負担が課題となっています。
射場における機体への燃料供給インターフェース、電力・通信接続、機体固定治具など、ロケット事業者側と射場側がそれぞれ準備する装備は、ロケットごとに仕様が異なるため互換性がありません。この状況は、新規ロケット開発の参入障壁を高め、既存ロケット事業者にとっても開発コスト増加の要因となっています。
本テーマは、複数のロケット事業者が共通利用可能な汎用設備の構築可能性を調査するフィージビリティスタディです。射場側設備の標準化・汎用化により、ロケット事業者の経済的負担を軽減し、国内ロケット開発を加速させることで、国際競争力強化と打上げ価格低下を実現し、射場の稼働率・収益向上にも貢献します。
技術開発の内容
本テーマでは、以下の調査・検討を対象とします:
1. 現状分析と課題抽出
射場設備の現状を分析し、汎用化の課題を明確化します:
既存設備の調査
- 国内射場の設備:種子島・内之浦等の設備仕様調査
- 各ロケット固有設備:H-IIA/B、イプシロン、民間ロケットの個別設備
- 海外射場の事例:米国・欧州の射場設備調査
- 設備投資実態:各事業者の設備開発コスト
汎用化阻害要因の分析
- 仕様の多様性:ロケットサイズ・推進剤種類・インターフェース仕様の違い
- 安全要求の差異:有人・無人、ペイロード種類による要求差
- 運用手順の違い:各事業者固有の運用プロセス
- 既存資産との整合:既に投資した設備との関係
ステークホルダー意見収集
- ロケット事業者ヒアリング:ニーズと懸念の把握
- 射場運用者意見:運用面の課題と要望
- 保険会社意見:安全性・信頼性への要求
- 規制当局確認:法規制との整合性
2. 汎用設備コンセプト検討
複数ロケットに対応可能な設備仕様を検討します:
燃料供給インターフェース
- 可変式接続口:異なるサイズのロケットへの対応
- 複数推進剤対応:液体酸素・液体水素・ケロシン等への対応
- 自動着脱機構:迅速な接続・切断
- 安全システム:漏洩検知・緊急遮断
電力・通信接続
- 標準コネクタ:共通電力・通信インターフェース
- 電圧可変システム:各ロケットの電圧要求への対応
- データプロトコル統一:通信規格の標準化
- 冗長化設計:高信頼性確保
機体固定・支持設備
- 可変式クランプ:異なる直径のロケットへの対応
- 位置調整機構:精密な機体位置決め
- 振動吸収:強風時の機体保護
- 迅速設定変更:ロケット交換時の短時間セットアップ
3. 技術的実現可能性評価
汎用設備の技術的実現性を評価します:
技術要件定義
- 性能要求:各ロケットの要求性能の包含
- 安全要求:最も厳しい安全基準の採用
- 運用要求:効率的な運用手順
- 保守要求:メンテナンス性の確保
技術リスク評価
- 技術的挑戦性:開発難易度の評価
- 既存技術適用性:他分野技術の転用可能性
- 開発期間:実用化までの時間
- 技術的不確実性:未解決の技術課題
実証計画検討
- 段階的実証:リスクを抑えた検証手順
- 地上試験:実射場環境での試験
- 実運用検証:実ロケットでの検証
- 改善サイクル:フィードバックに基づく改良
4. 経済性・事業性評価
汎用設備の経済合理性を評価します:
コスト分析
- 設備開発コスト:汎用設備の初期投資
- 個別設備比較:従来の個別開発との比較
- 運用コスト:維持管理費用
- ライフサイクルコスト:長期的な総コスト
事業者メリット評価
- 初期投資削減:ロケット事業者の負担軽減
- 開発期間短縮:市場投入時期の早期化
- 柔軟性向上:ロケット改良への対応容易化
- リスク低減:設備トラブルリスクの低減
射場側メリット評価
- 稼働率向上:複数ロケット対応による打上げ増加
- 収益増加:利用料収入の増大
- 保守効率化:共通設備による保守合理化
- 国際競争力:柔軟な対応力による優位性
5. 実装計画立案
汎用設備の実装に向けた計画を策定します:
標準化戦略
- 段階的標準化:優先度の高い設備から順次標準化
- 国内標準策定:国内ロケット業界での合意形成
- 国際標準提案:国際標準化機構への提案
- 柔軟性確保:将来技術への拡張性
実装ロードマップ
- 短期計画(2-3年):重要設備の汎用化
- 中期計画(3-5年):全体システムの統合
- 長期計画(5-10年):次世代技術への対応
- マイルストーン設定:各段階の達成目標
関係者連携体制
- 産官学連携:効果的な推進体制
- コンソーシアム形成:業界団体の設立検討
- 情報共有の仕組み:ノウハウ・課題の共有
- 意思決定プロセス:合意形成の手続き
期待される効果
本フィージビリティスタディにより、以下の効果が期待されます:
ロケット開発の加速
- 射場設備開発期間の短縮
- 初期投資の削減
- 新規参入障壁の低減
- 開発リスクの軽減
打上げ能力の向上
- 年間打上げ機数の増加
- 打上げスケジュールの柔軟性向上
- 緊急打上げへの対応
- 射場稼働率の向上
国際競争力の強化
- 打上げ価格の低減
- サービス品質の向上
- 海外顧客の獲得
- 国内需要の海外流出防止
公募情報
公募スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年7月25日 |
| 公募締切 | 2025年9月18日(正午) |
| 一次審査(書面) | 2025年9月中旬~10月中旬 |
| 二次審査(ヒアリング) | 2025年10月下旬~11月中旬 |
| 結果通知・発表 | 2025年12月頃 |
応募要件
必須要件
- e-Radの機関・研究者登録が完了していること
- 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
- 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
- 射場設備またはロケット地上設備の知見を有すること
実施体制要件
- ロケット射場運用または地上設備開発の経験を有すること
- システムエンジニアリング・標準化の専門知識
- ロケット事業者・射場運用者との連携体制
- 実現可能性を多角的に評価できる体制
審査基準
主な審査・評価の観点:
- 調査計画の妥当性
– 調査項目の網羅性
– 調査手法の適切性
– スケジュールの実現可能性
- 技術的実現性評価
– 汎用化コンセプトの妥当性
– 技術課題の適切な抽出
– 実現可能性の客観的評価
- 経済性・波及効果
– コスト削減効果の定量評価
– 関係者へのメリット
– 産業全体への波及効果
- 実施体制・マネジメント
– 射場設備・ロケット地上設備の専門性
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– ステークホルダーとの連携体制
関連情報
国内外の動向
海外の射場運用
- ケープカナベラル(米国):複数ロケット事業者の利用
- バンデンバーグ(米国):柔軟な打上げ対応
- ギアナ宇宙センター(仏領ギアナ):アリアン・ソユーズ・ベガ対応
国内射場
- 種子島宇宙センター:H-IIA/B、H3対応
- 内之浦宇宙空間観測所:イプシロン対応
- 民間射場計画:各地での射場建設構想
関連資料
まとめ
テーマ2-21「射場における高頻度打上げに資する汎用設備フィージビリティスタディ」は、複数ロケット事業者が共通利用可能な射場設備の構築可能性を調査し、ロケット開発の加速と国際競争力強化を目指す重要な研究です。
汎用設備の実現により、ロケット事業者の経済的負担軽減、開発期間短縮、新規参入促進が実現し、年間打上げ機数の増加と射場稼働率向上が期待されます。
応募締切は2025年9月18日(正午)です。射場設備やロケット地上設備の専門知識を有し、実現可能性を多角的に評価できる企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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