テーマ2-5:衛星通信と地上ネットワークの統合運用の実現に向けた周波数共用技術等の開発・実証
テーマID: theme2_5
カテゴリ: 衛星等(第二期)
作成日: 2025-10-22
テーマ2-5:衛星通信と地上ネットワークの統合運用の実現に向けた周波数共用技術等の開発・実証
概要
現在、衛星通信と地上ネットワークは独立して運用されており、シームレスに切り替え可能な統合ネットワークとしては機能していません。特に、衛星通信で使用する周波数帯と地上ネットワークで使用する周波数帯の干渉が大きな課題となっています。
携帯電話と同一周波数帯を活用する衛星通信サービスが広がる中で、地上ネットワークとの周波数干渉により利用可能なエリアが制限されるという問題が発生しています。また、統合ネットワークの一部である衛星通信が海外事業者に支配される状況は、我が国の通信自律性の観点から望ましくありません。
本テーマでは、周波数干渉を回避し、通信状況や端末の状況に応じてシームレスに衛星と地上の周波数を切り替えるための周波数共用技術の開発・実証を支援します。日本の事業者がネットワークをコントロール可能な体制の構築を前提としています。
技術開発の内容
本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:
1. 周波数共用技術
衛星通信と地上ネットワークが同一周波数帯を効率的に共用するための技術を開発します:
干渉回避技術
- 動的周波数割当:リアルタイムでの干渉状況に応じた周波数の最適配分
- 干渉検知システム:地上・衛星間の干渉を高精度に検知
- 出力制御技術:干渉を最小化する送信電力の自動調整
- ビーム制御技術:干渉源を避けるビームフォーミング
共用エリア管理技術
- 地理的データベース:衛星・地上システムの運用エリア情報の統合管理
- リアルタイム調整:運用エリアの動的な調整と最適化
- 除外ゾーン管理:干渉が懸念されるエリアの自動設定
- 協調制御システム:衛星・地上事業者間での調整機能
スペクトラム効率化
- 周波数再利用技術:空間的・時間的な周波数再利用の高度化
- 認知無線技術:空き周波数の自動検出と利用
- 適応変調符号化:干渉状況に応じた変調方式の最適選択
- MIMO技術活用:多重アンテナによる周波数利用効率向上
2. シームレス切替技術
衛星通信と地上ネットワーク間でのシームレスな切り替えを実現する技術を開発します:
ハンドオーバー技術
- 高速切替プロトコル:通信断を最小化する高速ハンドオーバー
- 予測制御:端末の移動予測に基づく事前準備
- ソフトハンドオーバー:同時接続による途切れのない切替
- 負荷分散制御:ネットワーク負荷を考慮した切替判断
統合認証システム
- 共通認証基盤:衛星・地上で共通の認証システム
- シングルサインオン:一度の認証で両ネットワークを利用
- セキュアローミング:安全なネットワーク間移動
- 課金統合管理:衛星・地上統合の料金体系
QoS制御
- サービス品質保証:ネットワーク切替時のQoS維持
- 優先度制御:重要通信の優先的なリソース割当
- 帯域保証機能:最低通信速度の保証
- 遅延最小化:ハンドオーバー時の遅延抑制
3. 統合ネットワーク制御技術
衛星・地上を統合した一体的なネットワーク制御技術を開発します:
統合制御プラットフォーム
- ネットワーク統合管理:衛星・地上リソースの一元管理
- トラフィック最適化:全体最適を考慮したルーティング
- 障害時自動切替:障害発生時の自動バックアップ
- 性能監視機能:ネットワーク全体のパフォーマンス監視
AI活用制御
- 需要予測:機械学習によるトラフィック需要の予測
- 最適配分:AIによる動的なリソース配分最適化
- 異常検知:AIによる異常トラフィックの自動検知
- 自動最適化:ネットワーク構成の自動最適化
エッジコンピューティング連携
- 分散処理最適化:衛星・地上エッジの統合利用
- キャッシング制御:効率的なコンテンツ配信
- 遅延最小化:処理配置の最適化による遅延削減
- リソース効率化:計算資源の有効活用
4. 端末技術
衛星・地上統合ネットワークに対応した端末技術を開発します:
マルチモード端末
- デュアルモード通信:衛星・地上両方式に対応
- 自動切替機能:通信状況に応じた自動ネットワーク選択
- 周波数帯域対応:複数周波数帯への対応
- アンテナ統合:衛星・地上共用アンテナ技術
小型化・低コスト化
- チップ統合:衛星・地上通信チップの統合化
- 省電力設計:バッテリー消費を抑えた設計
- 量産化技術:低コスト製造プロセスの確立
- 普及価格帯:一般ユーザーが購入可能な価格設定
期待される効果
本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:
ユビキタスな通信環境の実現
- 山間部・離島・海上等での通信カバレッジ拡大
- 災害時のバックアップ通信手段確保
- シームレスな全国通信サービス
- ユーザー利便性の大幅向上
通信自律性の確保
- 国内事業者によるネットワーク制御
- 海外事業者への依存度低減
- 国産技術による統合ネットワーク構築
- 通信インフラの安全保障
周波数資源の有効活用
- 限られた周波数帯の効率的利用
- 干渉問題の解決による利用エリア拡大
- 新規サービス創出のための周波数確保
- 国際競争力のある周波数利用技術の確立
公募情報
公募スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年8月22日 |
| 公募締切 | 2025年10月16日(正午) |
| 一次審査(書面) | 2025年10月中旬~11月中旬 |
| 二次審査(ヒアリング) | 2025年11月下旬~12月上旬 |
| 審査結果通知 | 2025年12月末頃 |
応募要件
必須要件
- e-Radの機関・研究者登録が完了していること
- 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
- 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
- 日本の事業者がネットワークをコントロール可能な体制を構築すること
実施体制要件
- 衛星通信または地上ネットワーク技術の知見・実績を有すること
- 周波数共用技術の研究開発実績
- 衛星事業者・地上通信事業者との連携体制
- 実証試験を実施可能な体制
審査基準
主な審査・評価の観点:
- 技術開発の実現可能性
– 周波数共用技術の技術成熟度と開発計画の妥当性
– シームレス切替技術の実現可能性
– 実証計画の具体性
- 通信自律性への貢献
– 国内事業者によるネットワーク制御の実現性
– 海外事業者依存度の低減効果
– 国産技術の活用度
- 事業性・持続性
– 商用サービスの市場規模と収益見通し
– 事業者との連携状況
– 民間資金調達の見通し
- 実施体制・マネジメント
– 通信技術の専門性と実績
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– 衛星・地上事業者との連携体制
関連情報
国内外の動向
海外の統合ネットワーク事例
- T-Mobile(米国):Starlink衛星との連携による全米カバレッジ
- AST SpaceMobile(米国):既存スマートフォンでの衛星通信
- Lynk Global(米国):携帯電話周波数帯での衛星サービス
国内の取り組み
- KDDI・SpaceX:Starlink連携による国内サービス検討
- NTTドコモ:衛星通信サービスの検討
- ソフトバンク:低軌道衛星通信への投資
関連資料
まとめ
テーマ2-5「衛星通信と地上ネットワークの統合運用の実現に向けた周波数共用技術等の開発・実証」は、衛星通信と地上ネットワークのシームレスな統合を実現し、ユビキタスな通信環境と通信自律性の確保を目指す重要なテーマです。
周波数共用技術、シームレス切替技術、統合ネットワーク制御技術の開発により、限られた周波数資源の有効活用と、国内事業者によるネットワーク制御が可能となります。
応募締切は2025年10月16日(正午)です。衛星通信または地上ネットワーク技術の専門知識を有し、統合ネットワーク実現に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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