テーマ2-7:有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術

テーマ2-7:有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術

テーマID: theme2_7
カテゴリ: 宇宙輸送(第二期)
作成日: 2025-10-22

テーマ2-7:有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術

概要

高速輸送や宇宙旅行などの新サービスの市場規模は、2040年代に大幅な成長が予測されており、往還型宇宙輸送システムの実現が強く求められています。民間事業者による有人宇宙輸送の構想は具体化しつつありますが、有人輸送に必須となる一部のコア技術の難易度が極めて高く、本格的なシステム開発が進んでいないのが現状です。

本テーマでは、有人宇宙輸送の実現におけるボトルネックとなっている部品・コンポーネント等の基盤となるコア技術の開発を実施し、民間事業者のビジネス構想を加速させることを目標とします。

技術開発の内容

本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:

1. 有人安全技術

人命を守るための高信頼性システム技術を開発します:

緊急脱出システム

  • 高速脱出機構:打上げ失敗時の乗員カプセル緊急分離システム
  • パラシュート展開制御:安全な着地を実現する展開制御技術
  • 衝撃吸収システム:着地時の衝撃から乗員を保護する技術
  • 全フェーズ対応:打上げから再突入までの全段階での脱出能力

生命維持システム

  • 環境制御システム(ECLSS):酸素供給・CO2除去・温湿度制御
  • 与圧制御:キャビン内圧力の精密制御
  • 放射線防護:宇宙放射線から乗員を保護する技術
  • 緊急医療設備:宇宙空間での応急処置機能

健康モニタリング

  • 生体情報監視:心拍・血圧・体温等のリアルタイム監視
  • 異常早期検知:健康異常の早期発見システム
  • 遠隔医療支援:地上医療チームとの連携機能
  • ストレス管理:心理的ストレスのモニタリングと対応
2. 高信頼性推進システム

有人輸送に求められる極めて高い信頼性を実現する推進システム技術を開発します:

冗長設計

  • 多重エンジン構成:エンジン故障時のバックアップ機能
  • 推力調整機能:一部エンジン故障時の推力補償
  • 燃料供給系冗長化:配管・バルブ系統の二重化
  • 制御系二重化:制御システムの冗長構成

高信頼性部品

  • 長寿命エンジン:繰り返し使用に耐える耐久性
  • 故障予知技術:部品劣化の予測と予防保全
  • 自己診断機能:システム異常の自動検知
  • クイックターンアラウンド:短時間での点検・整備技術

推進剤安全管理

  • 推進剤漏洩検知:微小な漏洩も検知する高感度センサー
  • 火災防止技術:推進剤火災のリスク最小化
  • 緊急排出システム:異常時の推進剤緊急排出機能
  • 環境影響低減:人体・環境への影響が少ない推進剤の活用
3. 再突入・着陸技術

安全な地球帰還を実現する技術を開発します:

熱防護システム(TPS)

  • 耐熱材料開発:再突入時の高温(1,500℃以上)に耐える材料
  • アブレータ最適化:効率的な熱吸収・放散技術
  • 再使用可能TPS:繰り返し使用可能な熱防護材
  • 損傷検知技術:TPS損傷の自動検知システム

誘導制御技術

  • 高精度軌道制御:目標着陸点への正確な誘導
  • 姿勢制御:再突入時の最適姿勢維持
  • 風外乱対応:大気乱流への適応制御
  • 自動着陸:完全自動での安全着陸

着陸システム

  • 逆推進着陸:エンジン逆噴射による軟着陸技術
  • 脚部展開機構:確実な着陸脚展開システム
  • 衝撃吸収:着陸時の衝撃緩和機構
  • 不整地対応:様々な地形での着陸能力
4. 故障許容設計技術

単一故障が致命的事故につながらない設計技術を開発します:

Fault Tolerant設計

  • 単一故障許容:1つの故障では機能喪失しない設計
  • 劣化運用モード:一部機能喪失時の代替運用
  • 故障分離:故障の波及を防ぐ隔離設計
  • 自動復旧機能:システムの自動再構成

異常検知・診断

  • AIによる異常検知:機械学習による異常パターン認識
  • 故障予測:データ分析による故障の事前予測
  • 原因特定支援:迅速な故障原因の特定
  • 対処手順提示:最適な対処方法の自動提示

安全評価技術

  • 確率論的リスク評価(PRA):定量的な安全性評価
  • FMEA/FTA解析:故障モード影響分析・故障の木解析
  • ヒューマンエラー対策:人的エラーのリスク低減
  • 安全認証プロセス:国際基準に準拠した安全認証
5. 運用安全技術

日常的な運用における安全性を確保する技術を開発します:

地上支援設備

  • 安全な推進剤充填:自動化された推進剤充填システム
  • 乗員乗降設備:安全な乗員の乗り降り機構
  • 緊急避難設備:地上での緊急時避難システム
  • 環境モニタリング:射場周辺の環境監視

訓練・シミュレーション

  • 高精度シミュレーター:実機に近い訓練環境
  • 緊急時訓練:様々な異常事態への対応訓練
  • VR/AR活用:仮想現実技術を用いた訓練
  • 技能認定システム:乗員・運用者の能力評価

運用手順最適化

  • 標準作業手順(SOP):安全な運用手順の確立
  • チェックリスト体系:漏れのない確認体系
  • コミュニケーション:確実な情報伝達プロトコル
  • 品質管理体制:一貫した品質保証システム

期待される効果

本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:

有人宇宙輸送の実現
  • 民間有人宇宙輸送サービスの開始
  • 宇宙旅行市場の創出
  • 高速輸送サービスの実現
  • 宇宙ステーション往還の民間化
安全性の大幅向上
  • 無人輸送を超える安全性の実現
  • 国際安全基準への適合
  • 乗員生存率の最大化
  • 社会的信頼の獲得
産業競争力の強化
  • 世界市場での競争力獲得
  • 有人宇宙輸送技術の確立
  • 関連産業の技術力向上
  • 新たな雇用創出

公募情報

公募スケジュール

項目 日程
公募開始 2025年8月8日
公募締切 2025年10月16日(正午)
一次審査(書面) 2025年10月中旬~11月下旬
二次審査(ヒアリング) 2025年12月上旬~12月下旬
結果通知 2026年1月頃

応募要件

必須要件

  • e-Radの機関・研究者登録が完了していること
  • 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
  • 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
  • 有人システム技術の知見を有すること

実施体制要件

  • 有人宇宙輸送または航空機の安全技術開発実績を有すること
  • 極めて高い信頼性が要求されるシステム開発の経験
  • 安全評価・認証の専門知識
  • 民間宇宙輸送事業者との連携体制

審査基準

主な審査・評価の観点:

  • 技術開発の実現可能性

– コア技術の技術成熟度と開発計画の妥当性
– 安全性向上効果の定量的評価
– 実証計画の具体性

  • ボトルネック解消への貢献

– 民間事業者が直面する技術課題の明確化
– 開発技術による課題解決の具体性
– ビジネス加速への効果

  • 国際競争力

– 海外の有人宇宙輸送技術との比較優位性
– 国際安全基準への適合性
– 国際市場での事業性

  • 実施体制・マネジメント

– 有人システム技術の専門性と実績
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– 民間宇宙輸送事業者との連携体制

関連情報

海外の有人宇宙輸送動向

米国

  • SpaceX:Crew Dragon(ISS有人輸送実績)
  • Blue Origin:New Shepard(宇宙旅行サービス)
  • Virgin Galactic:SpaceShipTwo(宇宙旅行サービス)

中国

  • 神舟宇宙船:有人宇宙輸送を継続的に実施
  • 宇宙ステーション「天宮」への定期的な有人輸送
国内の関連技術開発

JAXA等の取り組み

  • HTV-X:無人補給機の技術
  • 再使用ロケット実験(RV-X):垂直着陸技術の実証

関連資料

まとめ

テーマ2-7「有人宇宙輸送システムにおける安全確保の基盤技術」は、民間有人宇宙輸送の実現に不可欠なコア技術の開発を支援し、宇宙旅行・高速輸送市場の創出を目指す重要なテーマです。

緊急脱出システム、高信頼性推進システム、再突入・着陸技術、故障許容設計など、人命を守るための高度な安全技術の確立により、民間事業者のビジネス構想が加速されます。

応募締切は2025年10月16日(正午)です。有人システム技術や高信頼性技術の専門知識を有し、民間有人宇宙輸送の実現に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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