テーマ2-9:地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術
テーマID: theme2_9
カテゴリ: 衛星等(第二期)
作成日: 2025-10-22
テーマ2-9:地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術
概要
衛星地球観測データ市場は2033年に1兆円超に成長すると予想される中、気候変動やそれを取り巻く世界情勢の変化により、環境変化の経済・社会への影響が拡大・複雑化しています。この状況において、衛星観測データとAI・数値モデルの融合による新規ソリューション創出が急務となっています。
本テーマでは、「エンドユーザーまで届けきる」ことを前提に、衛星地球観測データを軸として生成AI、数値モデル、大規模言語モデルなどを統合した革新的システム(集合知モデル)の開発を推進します。高いユーザビリティを備えたツール開発と実装サイクルを通じて、非宇宙分野企業の参入促進と新規衛星ビジネス創出を目指します。
技術開発の内容
本テーマでは、以下の技術開発を対象とします:
1. 衛星データとAI融合技術
衛星観測データとAI技術を統合し、高度な情報抽出を実現する技術を開発します:
生成AI活用
- 衛星画像生成:不足データの補完や将来予測画像の生成
- 超解像処理:低解像度画像の高解像度化
- 雲除去技術:雲に隠れた地表情報の復元
- 欠損データ補完:観測データの空白期間を埋める技術
機械学習による自動解析
- 土地被覆分類:植生・都市・水域等の自動分類
- 変化検出:時系列データからの変化自動抽出
- 異常検知:災害・環境異常の早期発見
- 予測モデル:過去データからの将来予測
大規模言語モデル(LLM)統合
- 自然言語での問い合わせ:専門知識不要のデータ検索
- 解析結果の自動説明:複雑な解析結果の分かりやすい説明生成
- レポート自動作成:観測データからの報告書自動生成
- 対話型インターフェース:チャットボットによるデータ活用支援
2. 数値モデル統合技術
衛星観測データと数値シミュレーションを統合する技術を開発します:
データ同化技術
- 気象モデル統合:衛星データの気象予測への活用
- 海洋モデル統合:海流・海面温度の高精度予測
- 陸域モデル統合:土壌水分・植生動態のモデル化
- リアルタイム更新:観測データによるモデルの逐次更新
物理モデルとAI融合
- ハイブリッドモデル:物理法則とデータ駆動型の統合
- 高速計算:AIによる計算の高速化
- 不確実性評価:予測の信頼性定量化
- マルチスケール統合:異なる空間・時間スケールの統合
シミュレーション高度化
- 高解像度化:詳細な環境変化の予測
- 長期予測:気候変動の長期的影響評価
- シナリオ分析:複数の対策シナリオの比較
- 影響評価:環境変化の経済・社会影響の定量化
3. 集合知モデル開発
複数のデータ・モデル・AIを統合した包括的システムを開発します:
マルチソースデータ統合
- 衛星データ統合:複数の衛星データの融合
- 地上観測統合:気象観測所・IoTセンサーデータの統合
- 社会経済データ統合:人口・経済活動データとの融合
- オープンデータ活用:公開データの効率的活用
知識統合プラットフォーム
- データベース統合:異種データベースの統一アクセス
- メタデータ管理:データの来歴・品質情報の管理
- 自動データ連携:データ更新の自動反映
- バージョン管理:データ・モデルの版管理
分散協調処理
- クラウド活用:大規模データの分散処理
- エッジコンピューティング:現場での即時処理
- 並列処理最適化:計算資源の効率的利用
- 処理フロー自動化:データ取得から解析までの自動化
4. 高ユーザビリティツール開発
専門知識がなくても利用できるツールを開発します:
直感的インターフェース
- ノーコード解析:プログラミング不要のデータ解析
- ビジュアル操作:ドラッグ&ドロップでの操作
- テンプレート提供:用途別の解析テンプレート
- ガイド機能:初心者向けのステップバイステップ案内
可視化技術
- 3D可視化:立体的なデータ表示
- 時系列アニメーション:変化の動的表示
- インタラクティブ地図:ユーザー操作可能な地図表示
- ダッシュボード:重要指標の一覧表示
APIサービス
- RESTful API:外部システムからのデータアクセス
- Webhook対応:イベント駆動型の自動処理
- SDK提供:各種プログラミング言語対応
- サンプルコード:利用事例の提供
5. 実装・社会実装支援
開発技術の実用化を支援する仕組みを構築します:
実証実験支援
- パイロットプロジェクト:小規模実証の実施
- ユーザーフィードバック:実ユーザーからの改善要望収集
- 性能評価:実環境での性能検証
- 課題抽出:実装上の問題点の明確化
ビジネスモデル構築
- 収益モデル設計:持続可能なビジネスモデル
- 価格設定:ユーザー受容性のある価格
- マーケティング:潜在ユーザーへのアプローチ
- パートナーシップ:異業種との連携
人材育成
- トレーニングプログラム:ユーザー向け研修
- 技術者育成:開発・運用人材の育成
- コミュニティ形成:ユーザーコミュニティの構築
- 知識共有:ベストプラクティスの共有
期待される効果
本テーマによる技術開発により、以下の効果が期待されます:
衛星データ利用の裾野拡大
- 非宇宙分野企業の参入促進
- 専門知識不要でのデータ活用
- 新規ユーザー層の開拓
- 市場規模の拡大
新規ビジネス創出
- 環境コンサルティングサービス
- 気候変動リスク評価サービス
- 農業・漁業への情報提供
- 保険・金融商品開発
社会課題解決への貢献
- 気候変動対策の高度化
- 災害予測精度の向上
- 持続可能な資源管理
- SDGs達成への貢献
公募情報
公募スケジュール
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募開始 | 2025年6月13日 |
| 公募締切 | 2025年8月21日(正午) |
| 一次審査(書面) | 2025年8月下旬~10月上旬 |
| 二次審査(ヒアリング) | 2025年10月上旬~11月中旬 |
| 結果発表 | 2025年12月頃 |
応募要件
必須要件
- e-Radの機関・研究者登録が完了していること
- 国内に研究開発拠点を有する日本の法律に基づく法人格を持つこと
- 研究代表者・研究分担者は日本の居住者であること
- エンドユーザーまで届けきる実装計画を有すること
実施体制要件
- AI・データサイエンスまたは数値モデリングの専門性を有すること
- 衛星データ利用の知見(または学習意欲)
- エンドユーザーとの連携体制
- 社会実装に向けた事業計画
審査基準
主な審査・評価の観点:
- 技術開発の革新性
– AI・数値モデル統合の新規性
– 技術的課題の明確化と解決方法
– 実証計画の具体性
- エンドユーザーへの到達性
– ユーザーニーズの明確性
– ユーザビリティの高さ
– 実装サイクルの具体性
- 事業性・市場性
– ビジネスモデルの妥当性
– 市場規模と収益見通し
– 非宇宙分野企業参入の促進効果
- 実施体制・マネジメント
– AI・データサイエンス技術の専門性
– 研究代表者のリーダーシップ・マネジメント能力
– エンドユーザー・事業者との連携体制
関連情報
国内外の動向
海外の衛星データ利用サービス
- Google Earth Engine:大規模衛星データ解析プラットフォーム
- Microsoft Planetary Computer:AI統合環境データプラットフォーム
- ESA Climate Change Initiative:気候変動監視プログラム
国内の取り組み
- Tellus(テルース):衛星データプラットフォーム
- 各種衛星データベンチャー:データ解析サービス提供
関連資料
まとめ
テーマ2-9「地球環境衛星データ利用の加速に向けた先端技術」は、衛星データとAI・数値モデルを融合し、エンドユーザーまで届けきる革新的システムの開発を支援する重要なテーマです。
生成AI、大規模言語モデル、数値モデルを統合した集合知モデルの開発により、非宇宙分野企業の参入促進と新規衛星ビジネス創出が期待されます。
応募締切は2025年8月21日(正午)です。AI・データサイエンス技術を有し、エンドユーザー目線での実装に意欲的な企業・研究機関の皆様は、ぜひご応募をご検討ください。

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