鉱山機械の基本工程 — 掘る・積む・運ぶ・選ぶ

1 1. 鉱山機械とは何か

鉱山機械とは、鉱床から鉱石を取り出す「採鉱(mining)」と、鉱石から有用鉱物を取り分ける「選鉱(mineral dressing)」を担う機械の総称である。 鉱業の対象は硬く、量は膨大で、有用成分は鉱石のごく一部にすぎない。 そのため鉱山機械は、「岩を砕く力」と「微細な粒を分ける精度」を工程ごとに分担して受け持つ。

この分担を、日本産業機械工業会(JSIM)の鉱山機械部会は機種で整理している。 すなわち (1) せん孔機(drilling machine)、(2) さく岩機(rock drill)、(3) 採炭機械(coal mining machine)、(4) 石油さく井機(oil well drilling machine)、(5) 積込機(loader)、(6) 破砕機(crusher)、(7) 摩砕機(grinding mill)、(8) 選別機(separator)、(9) 給鉱機(feeder)の9機種である (1)。 英語圏の体系書も、鉱山機械を掘削・積込・運搬・破砕・選別という作業単位で分類する。 JSIM の機種分類は、この国際的な枠組みと整合している (2)

本記事は、この9機種を「掘る・積む・運ぶ・選ぶ」の4動作に束ね直す。 鉱石が製品になるまでの工程連鎖をたどる、連載の入口である。

動作 主な工程 JSIM 機種(抜粋)
掘る 穿孔・発破・採掘 せん孔機・さく岩機・採炭機械
積む 積込 積込機(LHD)
運ぶ 運搬 (第2部で詳説)
選ぶ 破砕・摩砕・選別・給鉱 破砕機・摩砕機・選別機・給鉱機

鉱業では、地下の鉱量のうちどれだけ取り出せるかが事業の前提となる。 JOGMEC の用語集は、この鉱量を品位の確からしさで分類する。 容積・比重・品位が明らかになった鉱量を「確定鉱量(proved ore reserve)」、推定された鉱量を「推定鉱量(probable ore reserve)」と呼ぶ (3)。 埋蔵鉱量に対し採鉱しうる鉱石量は「可採鉱量(reserves of minable ore)」である。 さらに採算が成り立つ最低品位を「カットオフ品位(cut-off grade)」、すなわち採算限界品位と定める。 機械の能力向上は、このカットオフ品位そのものを押し下げてきた。

2 2. 掘る — 穿孔・さく岩・発破

採掘の第一歩は、岩盤に孔をあけ、火薬で破砕する前処理工程である。 岩盤に発破孔をあける作業を「穿孔(drilling)」と呼ぶ。 打撃と回転で岩を砕く機械が、さく岩機(rock drill)である。 さく岩機は採石や土木でも使う共通機械で、用語の扱いは §6 で述べる。

JOGMEC の用語集は、採掘の基本語を体系的に定義する。 鉱石を採掘することを「採鉱(mining)」、石炭を採掘することを「採炭(coal mining)」と呼ぶ。 既知の鉱床から鉱石採取を目的に掘削する作業は「採掘(stoping)」と区別される (3)。 「採掘法(mining method)」は、坑内金属採鉱法・坑内石炭採鉱法・露天採鉱法・砂鉱採鉱法に大別される。 その下位には、150種類以上の手法が知られる (3)。 理論可採鉱量に対する実採掘量の比は「採掘率(mining recovery)」と定義される (3)

地下で行う採掘を「坑内採掘(underground mining)」という。 ここでは、鉱石採掘場へ通じる横坑である「坑道(drift)」を張りめぐらせる。

保安のため削り残した鉱体部分を「鉱柱(pillar)」と呼び、これで天盤を支える (3)。 天盤を採掘に伴って崩落させる方式は、「ケービング法(caving)」と総称される。 これを大規模化・能率化した「サブレベル・ケービング採掘法(sublevel caving)」は、第3部で扱うキルナ鉄鉱山の主力採掘法でもある (3)

3 3. 積む・運ぶ — 積込機と運搬

破砕された鉱石やずり(廃石)を積み込み、次工程へ運ぶのが積込・運搬工程である。 坑内採掘の主役は、LHD(Load-Haul-Dump、積込・運搬・排土を一台でこなす低姿勢の関節式車両)である。 露天掘りでは、超大型のダンプトラック(haul truck)が同じ役割を担う。

近年は、ディーゼル機関に代えてバッテリーで駆動する電動車両(BEV)への置き換えが進む。 サンドビックのバッテリー電動ローダー Toro LH518iB は、積載量18トン、電動駆動出力540 kW、リン酸鉄リチウム電池を採用したと公表されている(メーカー仕様、datasheet 取得日 2026-06-03)(4)。 電動化の主眼は排ガス削減だけでなく、坑内で必要となる換気動力を低減できる点にもある。

運搬は、軌道(rail haulage)・トラック・ベルトコンベヤのどれを使うかで設備思想が変わる。 JOGMEC の用語集は、鉱石・廃石を運ぶ車両を「鉱車(mine car)」、採掘した鉱石を自然落下で運ぶ小立坑を「坑井(ore pass / chute)」と定義する (3)。 運搬は、重力や坑内構造を利用した設計対象なのである。 大規模鉱山の軌道運搬の現代的形態は、第2部の主題である。

4 4. 選ぶ — 破砕・摩砕・選鉱

運び出された鉱石は、そのままでは利用できない。 有用鉱物は脈石(gangue)と固く結びついている。 これを物理的に切り離してはじめて、選別が可能になる。

4.1 4.1 破砕と摩砕(粉砕)

選鉱の前段は、鉱石の粒を段階的に小さくする「粉砕(comminution)」である。 日本語では破砕と摩砕の総称を「粉砕」と呼ぶ。 学術的には、crushing(破砕)と grinding(磨鉱)を含む粒径低減操作の全体を指す (5)。 粉砕の目的は、有用鉱物の粒子を脈石から切り離す「単体分離(liberation)」にある (6)

粉砕の工程は、段階構造をとる。 一次破砕機(ジョークラッシャ)で粗く割り、二次・三次破砕機(コーンクラッシャ)で中粒に砕き、摩砕機(SAG ミル・ボールミル)で微粒まで磨り潰す。 MRIC(金属資源レポート)は、標準的な磨鉱フローを「SAG ミルで粉砕され、粉砕された鉱石はスクリーンで粗粒と細粒に分級される」と記す (7)。 粗粒はペブルクラッシャーで再粉砕して SAG ミルに戻し、細粒はサイクロンとボールミルの閉回路で浮選給鉱粒度まで磨鉱する (7)。 摩砕機の大型化は著しい。 住友金属鉱山の選鉱史によれば、米国モレンシ鉱山の直径36フィート(約11.0 m)のミルは、世界最大の SAG ミルの一つとされる(同社選鉱史 OCR、page_5)(8)

4.2 4.2 選別の5方式と浮遊選鉱

粉砕で単体分離した鉱物は、物理的性質の差を利用して選り分ける。 MRIC は選鉱(ore dressing)を、「鉱物の化合物形態を変化させず、物理的性状の差により選別する方法」と定義する (7)。 利用する性状は、色・硬さ・比重・磁性・帯電性・表面の濡れ易さである。 これに対応して選別法は、浮遊選鉱法(flotation)・比重選鉱法・光学選鉱法・静電選鉱法・磁力選鉱法の5方式に整理される (7)。 粉体工学の用語辞典も、選鉱を有用鉱物と脈石を物理的に分離する操作と位置づける (9)

5方式のうち現代の主役は、浮遊選鉱(浮選)である。 MRIC は浮選の原理を、「一般に岩石の表面は親水性であり、金属は疎水性であることが多いことから、鉱石を水と共に粉砕し…下から空気を吹き込むと、疎水性の物質が泡に付着して浮遊してくることを利用した方法」と説明する (7)。 浮選は、低品位鉱石からの回収率を画期的に高めた技術である (7)。 浮選機・磁選機へ鉱石を定量供給するのが、給鉱機(feeder)である。 給鉱機は、選別機と並んで JSIM 分類の機種に位置づけられている (1)

4.3 4.3 銅にみる工程連鎖 — 品位を段階的に高める

破砕から選鉱・製錬へ続く工程連鎖は、品位の段階的な向上として読むとわかりやすい。 MRIC によれば、銅は鉱床から品位0.5〜2%程度の銅鉱石を採掘する。 鉱山で行う浮遊選鉱により、品位20〜40%程度の銅精鉱に高める (7)。 銅精鉱は製錬所で乾式製錬により品位99%程度の粗銅となり、最後に電解精製で品位99.99%の電気銅が得られる (7)。 わずか1%前後の鉱石が、純度99.99%へ精製される——この桁の跳躍こそ、鉱山機械が担う工程連鎖の意味である。

銅にはもう一つの生産経路がある。 MRIC は、鉱石に希硫酸を掛けて銅を浸出させ、溶媒抽出で濃縮し、電解採取で電気銅を得る「SxEw 法(solvent extraction-electrowinning、溶媒抽出-電解採取)」を挙げる。 硫化鉱は主に乾式製錬、酸化鉱は SxEw 法が適用される (7)。 この SxEw 法による生産は、世界の銅生産量の約20%を占める (7)。 ただし米国南部・チリ・ペルーのような乾燥地帯で発展した技術であり、降水量の多い地帯ではそのまま適用しにくい (7)

5 5. 日本の鉱山機械と現代的課題

日本では、金属鉱山の操業そのものが時代とともに縮小し、構成する機械にも変化がみられる (1)。 それでも、選鉱技術の蓄積は国内外で受け継がれてきた。 住友金属鉱山の選鉱史によれば、別子鉱山系の新居浜選鉱場は昭和37年(1962年)に最大能力2,300 t/d で操業した(同社選鉱史 OCR、page_2)(8)。 同社が関与した米国モレンシ鉱山では、選鉱向け鉱石の銅品位0.68%、リーチング向け鉱石の銅品位0.27%という低品位鉱を、日量12万トン超の規模で処理している(同社選鉱史 OCR、page_4)(8)

こうした低品位鉱の大量処理は、現代鉱業の構造的課題を映す。 JOGMEC は、探査地域の奥地化・深部化、鉱石品位の低下、不純物の増加を技術開発の重点課題に挙げている (10)。 品位が下がれば、同じ金属量を得るのに、より多くの鉱石を掘り、運び、砕き、選らねばならない。 鉱物処理技術の側からも、資源の持続的供給に向けたミネラルプロセシングの効率化が論じられている (11)。 ここに、機械の自動化・電動化・大型化が要請される根拠がある。

自動化の到達度は、業界標準の軸で測られるようになった。 Global Mining Guidelines Group(GMG)は、完全手動の Level 0 から完全自動の Level 5 までの6段階で自律化レベル(Levels of Autonomy)を定義している (12)。 露天運搬では、コマツの自律運搬システム(AHS)の累計稼働台数が1,000台に達したと公表されている(メーカー公表値、2026年4月)(13)。 その出発点が基本工程の効率化にあることは、押さえておきたい。

6 6. 第2部以降への接続

本記事では、鉱山機械を「掘る・積む・運ぶ・選ぶ」の4動作と JSIM の9機種で整理し、採鉱から選鉱・製錬へと品位を段階的に高める工程連鎖をたどった。 続く各部は、この基本工程を具体的な現場に展開する。 第2部「世界の鉱山軌道」は「運ぶ」を掘り下げ、狭軌坑内軌道から自動運転の rail haulage までを扱う。 第3部「キルナ標準軌(1,435 mm)鉱山鉄道」は、標準軌(standard gauge、1,435 mm)を採用したスウェーデンのキルナ鉄鉱山を題材にする。 第4部「UNESCO 鉱山産業遺産」は、人力・蒸気の時代から現代機械への連続性を産業遺産から読み解く。

連載の境界も明示しておく。 本特集は、鉱石・石炭・金属資源の採掘・運搬・破砕・選鉱を扱う。 建築・装飾用の銘石(dimension stone)の採取・石材加工は、並行する採石の特集(P-STONE)の領域とする。 さく岩機(rock drill)・発破・ワイヤーソーのように両者で共通する機械は、本特集では鉱石採掘の文脈で短く相互参照するにとどめる。 両連載とも JSIM の表記に従い、rock drill を「さく岩機」と表記する。

鉱山機械をめぐる企業名(サンドビック、コマツ、住友金属鉱山など)の正式社名対応は、本サイトの用語集の企業名テーブル(§H 参照)に集約する。 鉱山機械の工程用語と軌道・運搬用語は、用語集の鉱山機械の節(§M)と鉄道・軌道系の節(§K.3)で相互参照できる。

参考文献

1.
日本産業機械工業会 鉱山機械部会. 鉱山機械 [Internet]. 2024年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.jsim.or.jp/p-mining/
2.
Springer Nature. Mining Machinery, Classification of. Encyclopedia of Mining and Mineral Processing [Internet]. 2023年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://link.springer.com/rwe/10.1007/978-981-99-2086-0_178
3.
金属鉱業事業団. 鉱業関係用語集 (採鉱・選鉱編) [Internet]. 1994年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://mric.jogmec.go.jp/public/report/1994-04/h6_4.pdf
4.
Sandvik Mining and Rock Solutions. Toro LH518iB Battery-Electric Loader Specification Sheet [Internet]. 2024年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.mining.sandvik/en/products/equipment/underground-loaders-and-trucks/electric-loaders/lh518ib/
5.
資源・素材学会. 破砕・粉砕. 資源と素材 [Internet]. 1997年 [cited 2026年6月3日];113(12):899–903. Available at: https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigentosozai1989/113/12/113_12_899/_article/-char/ja
6.
Toshio Inoue. Mineral Comminution and Separation Systems. Materials Science and Engineering (EOLSS) [Internet]. UNESCO-EOLSS; 2009年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.eolss.net/sample-chapters/C05/E6-37-06-05.pdf
7.
威一. 最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(1) 銅. 金属資源レポート [Internet]. 2013年5月 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://mric.jogmec.go.jp/wp-content/old_uploads/reports/resources-report/2013-05/MRv43n1-03.pdf
8.
政幸. 住友金属鉱山(株)の選鉱技術の変遷と発展. 資源処理技術. 1998年;45(2):131–7. doi:10.4144/rpsj1986.45.131
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粉体工学会. 粉体工学用語辞典「選鉱」 [Internet]. 2023年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.sptj.jp/powderpedia/words/11224/
10.
エネルギー・金属鉱物資源機構. 金属資源技術開発 [Internet]. 2024年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.jogmec.go.jp/activities/metal/technology-development/index.html
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敦. 鉱物処理技術の課題と展望 — 資源の持続的供給に向けたミネラルプロセシングの方向性 [Internet]. 日本学術会議 資料; 2018年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/46-k-1-siryo5.pdf
12.
Global Mining Guidelines Group. Guideline for the Implementation of Autonomous Systems in Mining (Version 2) [Internet]. 2024年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://gmggroup.org/guidelines/
13.
Komatsu Ltd. Komatsu’s autonomous haulage fleet reaches 1,000 trucks [Internet]. 2026年 [cited 2026年6月3日]. Available at: https://www.komatsu.jp/en/newsroom/2026/20260422