Falcon Heavy
SpaceX超大型ロケット
0.1 概要
Falcon Heavyは、SpaceX社が開発した超大型打上げロケットであり、現役最強の運用ロケットである。
基本情報: - 製造: SpaceX - 初打上げ: 2018年2月6日 - 状態: 運用中 - ペイロード能力（LEO）: 63,800 kg - ペイロード能力（GTO）: 26,700 kg - 構成: 三連コア（Falcon 9 × 3基）
技術的特徴: - 🚀 現役最強の運用ロケット（LEO 63,800kg） - 🔄 三連ブースター同時着陸（2基のサイドブースター + センターコア） - 🎯 100%成功率（11回打上げ、全て成功） - 🛰️ 重量級商業・政府ミッション対応
市場ポジション: Vulcan Centaurを上回る最強の運用ロケット（SLS、Starshipを除く）
0.2 基本仕様
0.2.1 寸法・質量
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 全高 | 70 m（230 ft） |
| 直径（単一コア） | 3.66 m（12 ft） |
| 幅（ブースター間） | 12.2 m（40 ft） |
| 打上げ時質量 | 1,420,788 kg（3,125,000 lb） |
| 推進剤質量 | 約1,400,000 kg |
0.2.2 構成
三連コア構成: Falcon 9 Block 5を3基束ねた設計
| コア | 詳細 |
|---|---|
| センターコア | 強化型Falcon 9（タンク壁厚増） |
| サイドブースター | 標準Falcon 9（取付ポイント追加） × 2基 |
| 第2段 | 標準Falcon 9第2段 |
0.2.3 ペイロード能力
| 軌道 | ペイロード質量（消耗） | ペイロード質量（再使用） |
|---|---|---|
| LEO | 63,800 kg | データなし |
| GTO | 26,700 kg | 8,000 kg（3コア回収） |
| 火星 | 16,800 kg | データなし |
| 冥王星 | 3,500 kg | - |
比較: Falcon 9（LEO 22,800kg）の約2.8倍
0.3 推進システム
0.3.1 第1段: Merlin 1D（27基クラスター）
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 総エンジン数 | 27基（各コア9基 × 3） |
| 推進剤 | LOX/RP-1 |
| 総海面推力 | 22,819 kN（5,130,000 lbf、510万ポンド） |
配置: - センターコア: Merlin 1D × 9基 - サイドブースター左: Merlin 1D × 9基 - サイドブースター右: Merlin 1D × 9基
0.3.2 第2段: Merlin 1D Vacuum
仕様: Falcon 9第2段と同一
0.4 再使用技術
0.4.1 三連ブースター回収
Falcon Heavyは、3基のコア全てを回収できる。
回収シナリオ
サイドブースター（2基）: - RTLS: 打上げ場への同時帰還着陸 - 着陸地点: LZ-1、LZ-2（Cape Canaveral） - 分離: 打上げ約3分後 - 着陸: 打上げ約8分後（ほぼ同時着陸）
センターコア: - ASDS: 海上ドローン船着陸 - 分離: 打上げ約8分後 - 着陸: 打上げ約11分後
三連同時着陸（ソニックブーム）
2018年2月6日: 初打上げでサイドブースター2基がほぼ同時着陸 音響効果: 2基のソニックブーム（LZ-1、LZ-2） 視覚効果: 2基の垂直着陸を同時観測、世界に衝撃
注: センターコアは初回着陸失敗（海上着水）、2回目以降は成功
0.5 運用実績
0.5.1 総合統計（2025年1月時点）
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 総打上げ回数 | 11回 |
| 完全成功 | 11回 |
| 成功率 | 100% |
| 年間打上げ | 2-3回 |
0.5.2 主要マイルストーン
| 日付 | ミッション | ペイロード | 意義 |
|---|---|---|---|
| 2018年2月6日 | Falcon Heavy Test Flight | Tesla Roadster | 初打上げ、サイドブースター2基同時着陸 |
| 2019年4月11日 | Arabsat-6A | 通信衛星 | 初商業打上げ、3コア全て回収成功 |
| 2023年11月1日 | NASA Psyche | 小惑星探査機 | NASAミッション |
0.6 運用射場
0.6.1 Kennedy LC-39A
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 所在地 | Kennedy Space Center、フロリダ州 |
| 着陸地点 | LZ-1、LZ-2（サイドブースター）、ドローン船（センターコア） |
| 年間打上げ | 2-3回 |
詳細: Kennedy LC-39 記事参照
0.7 主要ミッション
0.7.1 NASA深宇宙探査
NASA Psyche（2023年11月1日）: 小惑星Psyche探査機 Europa Clipper（2024年10月予定）: 木星衛星Europa探査機
0.7.2 米国国家安全保障
USSF-44（2022年11月1日）: 米国宇宙軍機密ペイロード USSF-67（2023年1月15日）: 米国宇宙軍機密ペイロード
0.7.3 商業打上げ
Arabsat-6A（2019年4月11日）: 通信衛星 ViaSat-3（2023年4月30日）: 通信衛星
0.8 将来展望
0.8.1 打上げ頻度向上
現状: 年間2-3回 市場: 重量級ペイロード需要増（大型通信衛星、深宇宙探査）
0.8.2 Starshipとの役割分担
Starship開発: SpaceXの次世代超大型ロケット Falcon Heavyの役割: 中期的に継続運用（確立された信頼性）