New Glenn
Blue Origin大型再使用型ロケット
1 概要
New Glennは、Blue Origin社が開発した大型再使用型打上げロケットであり (1,2)、商業打上げ市場への本格参入を目指すロケットである。
基本情報: - 製造: Blue Origin(ブルーオリジン) - 初打上げ: 2025年1月16日(NG-1ミッション) - 状態: 運用中(初期運用段階) - ペイロード能力(LEO): 45,000 kg - ペイロード能力(GTO): 13,000 kg以上 - 月軌道投入能力: 7,000 kg
技術的特徴: - 🔄 第1段垂直着陸・再使用(最低25回再使用設計) - 🚀 直径7メートル(米国最大級ロケット) - 🔧 BE-4エンジン×7基(LOX/LNG、世界最大級メタンエンジン) - 🛰️ 大型衛星・星座展開対応 - 🌕 月・深宇宙ミッション対応
市場ポジション: Falcon 9/Heavyの競合、商業重量級打上げ市場参入
2 基本仕様
2.1 寸法・質量
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 全高 | 98 m(320 ft)以上 |
| 直径 | 7.0 m(23 ft) |
| 段数 | 2段 |
| フェアリング直径 | 7.0 m |
注記: 7メートル直径は米国最大級(Falcon 9の約2倍、Vulcanと同等)
2.2 ペイロード能力
| 軌道 | ペイロード能力 |
|---|---|
| LEO(低軌道) | 45,000 kg(45トン) |
| GTO(静止トランスファ軌道) | 13,000 kg以上(13トン以上) |
| TLI(月軌道投入) | 7,000 kg |
比較: - Falcon 9(LEO): 22,800 kg - Falcon Heavy(LEO): 63,800 kg - Vulcan Centaur(LEO): 27,200 kg
市場: New GlennはFalcon 9とFalcon Heavyの中間に位置
3 推進システム
3.1 第1段: BE-4エンジン×7基
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| エンジン名 | BE-4(Blue Engine 4) |
| エンジンサイクル | 酸素リッチ段階燃焼サイクル |
| エンジン数 | 7基 |
| 推進剤 | LOX(液体酸素)/ LNG(液化天然ガス) |
| 海面推力(1基) | 2,450 kN(550,000 lbf) |
| 海面推力(合計) | 17,150 kN(3,850,000 lbf、385万ポンド) |
| 真空推力(1基) | 2,670 kN |
技術的特徴: - 世界最強級メタンエンジン: BE-4は酸素/メタン燃料エンジンとして世界最大級の推力 - 酸素リッチ段階燃焼サイクル: 高効率・高性能 - 再使用設計: 最低25回の再使用を想定 - 推力制御: スロットル可能(着陸時の精密制御)
BE-4エンジン実績: ULA Vulcan Centaurロケットでも採用(2024年1月初飛行成功)
3.2 第2段: BE-3Uエンジン×2基
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| エンジン名 | BE-3U(Blue Engine 3 Upper stage) |
| エンジン数 | 2基 |
| 推進剤 | LOX(液体酸素)/ LH2(液体水素) |
| 真空推力(合計) | 1,600 kN |
| 再始動能力 | 複数回再始動可能 |
技術的特徴: - 水素エンジン: 高比推力(高効率) - 複数回再始動: 複雑な軌道投入ミッションに対応 - 消耗型: 第2段は再使用しない(将来的な再使用化は検討中止)
4 再使用システム
4.1 第1段回収システム
着陸方式: - 海上プラットフォーム着陸: 打上げ場から約1,000 km(620マイル)離れた洋上プラットフォームに垂直着陸 - 垂直着陸: SpaceX Falcon 9と同様の垂直着陸技術
再使用設計目標: - 最低25回再使用: 第1段ブースターは最低25回の飛行を想定 - 迅速なターンアラウンド: 短期間での再打上げを目指す
NG-1ミッション結果 (3,4): - 軌道投入: ✅ 成功(初飛行で軌道到達) - 第1段着陸: ❌ 失敗(降下中にブースター喪失)
注記: Blue Originは軌道到達を主目標としており、NG-1ミッションは成功と評価
5 開発経緯
5.1 計画発表・初期開発(2016年-2020年)
2016年9月: New Glenn計画発表 - 名称由来: 宇宙飛行士ジョン・グレン(John Glenn)に由来 - 当初計画: 2段型(現行)と3段型の2バージョン検討
2017年-2019年: 製造施設建設 - フロリダ州ケープカナベラルにロケット製造工場建設 - LC-36(Launch Complex 36)を打上げ施設として改修
5.2 開発遅延・進展(2020年-2024年)
2020年-2023年: 開発遅延 - 当初目標(2020年)から遅延 - BE-4エンジン開発に注力(Vulcanロケット向けにも供給)
2024年: 統合試験開始 - 統合打上げ機(ILV: Integrated Launch Vehicle)のホットファイア試験成功 - 第1段ブースターの燃焼試験完了
5.3 初飛行(2025年1月)
2025年1月13日: 初打上げ試み → スクラブ(中止)
2025年1月16日 2:03 AM EST: NG-1ミッション成功 (4) - 打上げ場: Cape Canaveral Space Force Station LC-36 - ペイロード: Blue Ring Pathfinder(Blue Origin製軌道間輸送機のデモ機) - 結果: - ✅ 軌道投入成功(中軌道: MEO) - ✅ ペイロード分離成功 - ❌ 第1段ブースター着陸失敗(降下中に喪失)
歴史的意義: 初飛行で軌道到達に成功した数少ないロケットの一つ
6 飛行実績
6.1 打上げ実績(2025年11月現在)
| ミッション | 日時 | ペイロード | 結果 |
|---|---|---|---|
| NG-1 | 2025年1月16日 | Blue Ring Pathfinder | ✅ 成功(軌道投入)/ ❌ 着陸失敗 |
| NG-2 ESCAPADE | 2025年(予定) | NASA ESCAPADE(火星探査機×2) | 天候により延期中 |
今後の予定: - NASA ESCAPADE: 火星探査ミッション(2機の探査機を火星軌道へ) - Project Kuiper: Amazon衛星星座展開(複数回契約) - 商業衛星打上げ: 複数の商業契約獲得
7 競合・市場ポジション
7.1 競合ロケット比較
| ロケット | LEO能力 | GTO能力 | 再使用 | 製造 |
|---|---|---|---|---|
| New Glenn | 45 t | 13 t+ | ✅(第1段) | Blue Origin |
| Falcon 9 | 22.8 t | 8.3 t(消耗)/ 5.5 t(再使用) | ✅(第1段) | SpaceX |
| Falcon Heavy | 63.8 t | 26.7 t(消耗)/ 8 t(再使用) | ✅(第1段×3) | SpaceX |
| Vulcan Centaur | 27.2 t | 15 t | 🔄(開発中) | ULA |
| Ariane 6 | 21.6 t | 11.5 t | ❌ | Arianespace |
市場ポジション: - Falcon 9の上位互換: より大型ペイロード対応 - Falcon Heavyの代替: 単一コア大型機としてコスト優位性 - 大型衛星星座展開: Project Kuiper(Amazon)の主力機
8 技術的革新性
8.1 BE-4エンジン(メタンエンジン)
利点: - 高性能: 酸素リッチ段階燃焼サイクルによる高効率 - 再使用性: メタンはケロシン(RP-1)より煤が少なく、エンジン再使用に有利 - コスト: 天然ガスは安価(長期的コスト低減)
実績: Vulcan Centaurロケットで既に実績あり(2024年1月初飛行成功)
8.2 7メートル直径フェアリング
利点: - 大型ペイロード対応: 大型衛星を一度に複数打上げ可能 - 衛星星座展開: 多数の衛星を一度に軌道投入
比較: Falcon 9フェアリング直径5.2 m、Ariane 6フェアリング直径5.4 m
9 将来計画
9.1 Project Kuiper展開
Amazon Project Kuiper: 低軌道衛星星座(3,236機計画) - Blue Originは複数回の打上げ契約を獲得 - New Glennの主要顧客の一つ
9.2 月・深宇宙ミッション
月着陸船Blue Moon: Blue Origin製月着陸船の打上げ機としてNew Glennを使用予定
その他: NASA、商業顧客の深宇宙ミッション対応
9.3 第2段再使用化(検討中止)
Project Jarvis: 第2段再使用化プロジェクト - 2025年時点で開発中止 - 現行New Glennは第2段消耗型