Miura 1
PLD Space欧州初民間サブオービタルロケット
1 概要
Miura 1は、スペインのPLD Space社が開発したサブオービタルロケットであり (1)、2023年10月7日に欧州初の民間企業によるロケット打上げ成功を達成した (2,3)。
基本情報:
- 製造: PLD Space(スペイン、エルチェ)
- 初飛行: 2023年10月7日(El Arenosillo、スペイン)
- 状態: 初飛行完了(テクノロジーデモンストレータ)
- ペイロード能力: 最大200 kg(サブオービタル)
技術的特徴:
- TEPREL-Bエンジン: LOX/ケロシン圧力供給式、推力30.2 kN (4)
- パラシュート回収: 機体全体を大西洋に着水回収し再使用
- 推力ベクトル制御: 再生冷却ノズル搭載
- 欧州民間初: 欧州宇宙産業における新興企業の金字塔 (5)
2 基本仕様
2.1 寸法・質量
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 全高 | 12.7 m |
| 直径 | 0.7 m |
| 段数 | 1段 |
2.2 ペイロード能力
| 条件 | ペイロード質量 |
|---|---|
| サブオービタル(最大) | 200 kg |
| 150 km到達時 | 100 kg |
3 推進システム
3.1 TEPREL-Bエンジン
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| エンジン名 | TEPREL-B |
| エンジンサイクル | 圧力供給式(Pressure-Fed) |
| 推力(海面) | 30.2 kN |
| 推進剤 | LOX/ケロシン |
| 燃焼時間 | 122秒 |
| 特徴 | 推力ベクトル制御、再生冷却ノズル |
TEPREL(Testbed Propulsion System)はPLD Spaceが自社開発したエンジンシリーズであり、Miura 1搭載のTEPREL-Bは軌道級Miura 5用TEPREL-Cの技術実証機としての役割も持つ (1)。
3.2 TEPREL-Cとの関係
TEPREL-Bで実証された主要技術は、Miura 5の第1段に5基クラスター搭載されるTEPREL-Cエンジンへと発展している (6)。TEPREL-Cは推力を約100 kN級に拡大し、ターボポンプ式サイクルへ移行することで比推力と推力重量比を大幅に向上させる計画である (7)。TEPREL-Bにおける再生冷却技術、推力ベクトル制御(TVC)のジンバル機構、および点火・停止シーケンスの実飛行検証データは、TEPREL-C開発のリスク低減に直接貢献した (4)。
4 初飛行: テレカナリウスミッション
2023年10月7日、スペイン南部のEl Arenosillo(INTA/CEDEA施設)から打上げが実施された (2,3)。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 打上げ日時 | 2023年10月7日 02:19 CET(00:19 UTC) |
| 射場 | El Arenosillo、スペイン |
| 到達高度 | 46 km(計画80 km、安全範囲理由で短縮) |
| 飛行時間 | 306秒 |
| 回収 | パラシュートによる大西洋着水、数時間後に回収 |
| 評価 | スコープ短縮にもかかわらず成功と判定 |
計画高度80 kmには到達しなかったものの、エンジン燃焼・機体制御・パラシュート展開・海上回収のすべてのシステムが正常に動作し、欧州初の民間ロケット打上げ成功として広く認知された (5)。
4.1 飛行プロファイルの詳細
テレカナリウスミッションの飛行プロファイルは以下の段階で構成された (3):
- T+0秒: TEPREL-Bエンジン点火、リフトオフ
- T+122秒: エンジン燃焼停止(MECO)、慣性上昇開始
- T+約200秒: 最高高度46 kmに到達、弾道降下開始
- T+約260秒: パラシュート展開シーケンス開始
- T+306秒: 大西洋着水
安全レンジ制約により計画高度80 kmから46 kmに短縮されたが、PLD Spaceはエンジンの全燃焼時間完遂、テレメトリデータの完全取得、およびGNC(誘導・航法・制御)システムの正常動作を確認し、ミッション目標の大部分を達成したと評価した (2)。
5 再使用方式
Miura 1は機体全体のパラシュート回収による再使用を採用する (1):
- エンジン燃焼終了後、慣性飛行で最高高度に到達
- 降下フェーズでパラシュートを展開
- 大西洋に着水
- 回収船により数時間以内に回収
この方式はFalcon 9のような推進着陸と比較して技術的に簡素だが、海水への浸漬による機体への影響が課題となる。
6 開発企業
6.1 PLD Space
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2011年 |
| 本社 | エルチェ、スペイン |
| 創業者 | Raúl Torres、Raúl Verdú、José E. Martínez |
| 従業員数 | 350名以上(2024年) |
| 累計資金調達 | 約$139-220M |
PLD Spaceは2011年に設立されたスペインの民間ロケット企業であり (8)、ESAのFLPP(Future Launchers Preparatory Programme)やELC(European Launcher Challenge、€169M)等の支援を受けて開発を進めている (9,10)。
スペインは2025年のESA予算で第4位の貢献国(€600M以上)に昇格しており、PLD Spaceはこの戦略の象徴的存在である。
7 欧州サブオービタル開発における位置づけ
Miura 1は欧州における民間サブオービタルロケット開発の先駆けであり、以下の点で独自の地位を確立した (1):
| 比較項目 | Miura 1(PLD Space、スペイン) | Themis(ArianeGroup、仏独) |
|---|---|---|
| 目的 | サブオービタル商業飛行+技術実証 | 再使用技術実証(VTOL) |
| 推進剤 | LOX/ケロシン | LOX/メタン |
| 回収方式 | パラシュート海上回収 | 推進着陸(ホッパー試験) |
| 状態 | 初飛行完了(2023年) | 地上試験段階 |
欧州では長年、Arianespace/ArianeGroupが打上げサービスを独占してきたが、Miura 1の成功は民間新興企業の参入可能性を実証し、European Launcher Challenge(ELC)など新規参入支援施策の加速に寄与した (3)。
8 将来展望
Miura 1はテクノロジーデモンストレータとしての役割を終え、PLD Spaceの開発重心は軌道級のMiura 5に移行している (11):
- TEPREL技術の実証: Miura 1で実証したTEPREL-Bエンジン技術がMiura 5のTEPREL-Cに発展
- 回収技術の知見: パラシュート回収の運用経験がMiura 5の第1段海上回収に活用
- 射場運用: El Arenosilloでの打上げ運用実績がCSG(ギアナ宇宙センター)での運用に貢献
- GNCシステムの発展: Miura 1の飛行データに基づき、Deimos SpaceとのGNC共同開発が進行中 (12)
Miura 5は2026年の初飛行を目指しており、SSO(太陽同期軌道、500 km)へ最大540 kgの投入能力を持つ小型軌道投入ロケットとして計画されている (6,11)。