Miura 5
PLD Space欧州民間軌道級ロケット
1 概要
Miura 5は、スペインのPLD Space社が開発中の小型軌道級ロケットであり (1)、欧州の民間企業として初の軌道投入能力を持つロケットを目指している (2)。
基本情報:
- 製造: PLD Space(スペイン、エルチェ)
- 初飛行予定: 2026年前半(CSG、フランス領ギアナ)
- 状態: 開発中
- ペイロード能力(LEO): 1,000 kg
技術的特徴:
- TEPREL-Cエンジン: バイオケロシン/LOX、5基クラスタ(第1段)(3)
- バイオケロシン推進剤: 環境配慮型のバイオRP-1を採用
- 第1段海上回収: パラシュートによる着水回収で再使用 (1)
- ESA ELC支援: €169Mの大型資金でMiura 5開発を加速 (4)
市場ポジション: Electron(LEO 300 kg)とVega C(LEO 3,300 kg)の中間を狙う欧州小型ロケット
2 基本仕様
2.1 寸法・質量
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 全高 | 34〜35.7 m |
| 直径 | 2.0 m |
| 段数 | 2段(+オプション: 3段キックステージ) |
2.2 ペイロード能力
| 軌道 | ペイロード質量 |
|---|---|
| LEO(赤道軌道) | 1,000 kg |
| SSO(500 km) | 540 kg |
対応軌道: LEO、赤道軌道、中傾斜軌道、極軌道、SSO (3)
3 推進システム
3.1 第1段: TEPREL-C × 5
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| エンジン名 | TEPREL-C |
| 搭載数 | 5基 |
| 推力(真空、単機) | 45 kN |
| 推進剤 | バイオケロシン(バイオRP-1)/ LOX |
| 特徴 | 再生冷却、推力ベクトル制御 |
3.2 第2段: TEPREL-C × 1
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 搭載数 | 1基(真空最適化) |
| 推進剤 | バイオケロシン / LOX |
TEPREL-Cは、Miura 1のTEPREL-Bの発展型であり (5)、推力・燃焼時間ともに大幅に向上している (1)。
3.3 バイオケロシンの採用
Miura 5は推進剤にバイオケロシン(バイオRP-1)を採用する点が特徴的である (3)。従来の石油由来ケロシンと比較し、CO2排出のライフサイクル低減を図る。これは欧州の環境政策に沿った設計判断であり、Electronの電動ポンプ(電力由来)やVega Cの固体推進剤(環境負荷大)とは異なるアプローチを取る。
4 再使用方式
Miura 5は第1段のパラシュート海上回収による再使用を計画している (1):
- 第1段・第2段分離後、第1段が弾道軌道で降下
- パラシュートを展開し減速
- 海上に着水
- 回収船により引き揚げ、整備後に再使用
この方式はFalcon 9の推進着陸と比較して技術的ハードルは低いが、海水浸漬による腐食対策が必要となる。Miura 1の初飛行での回収実績 (6) が本方式の技術的基盤となっている。
5 開発状況
5.1 開発タイムライン
| 時期 | マイルストーン |
|---|---|
| 2023年10月 | Miura 1初飛行成功(TEPREL技術実証) (7) |
| 2024年 | ESA ELC €169M獲得 (4) |
| 2024年 | Deimos SpaceとGNC共同開発契約 (8) |
| 2025年Q4 | QM2(第2次試験機)完成予定 |
| 2026年Q1 | 飛行型ロケット準備完了予定 |
| 2026年前半 | 初試験飛行予定(CSG) (2) |
5.2 ESA支援
PLD Spaceは設立以来、ESAの複数プログラムから支援を受けている (9,10):
| 時期 | プログラム | 金額 |
|---|---|---|
| 2016年 | FLPP | $800,000 |
| 2018年 | FSS | $368,000 |
| 2024年 | ELC | €169M |
| 2024年 | Flight Ticket Initiative | 打上げ機会支援 |
| 2024年 | ESA Boost! | システム開発契約 |
€169MのELC(European Launcher Challenge)資金は、Miura 5開発の主要財源であり、製造・試験・射場整備に充てられる (4)。
6 運用射場
6.1 CSG(ギアナ宇宙センター)
Miura 5の打上げは、フランス領ギアナのCSG(Centre Spatial Guyanais)から実施される予定である (1):
- 施設: Diamantロケット跡地を改装した商用マイクロランチャー施設
- 利点: 赤道に近い(北緯5.2度)ため、LEO・赤道軌道投入に有利
- PLD Spaceの位置づけ: 同施設の最初の利用者となる予定
7 競合比較
欧州の小型ロケット市場におけるMiura 5のポジション (1):
| 項目 | Miura 5 | Electron | Vega C |
|---|---|---|---|
| 開発企業 | PLD Space | Rocket Lab | Avio/ESA |
| 国 | スペイン | ニュージーランド/米国 | イタリア/欧州 |
| LEO能力 | 1,000 kg | 300 kg | 3,300 kg |
| 推進剤 | バイオケロシン/LOX | LOX/RP-1 | 固体+液体 |
| 再使用 | 第1段海上回収 | 第1段海上回収(試験中) | なし |
| 打上費用(推定) | $5-7M | $7M | $35M |
| 状態 | 開発中 | 運用中 | 運用中(問題あり) |
Miura 5はElectronの約3倍のペイロード能力を持ちながら、Vega Cの1/5の費用を目標としており、コスト競争力のある欧州独自の小型ロケットとしての地位を確立する狙いがある。
8 開発企業
PLD Spaceの詳細はMiura 1の開発企業セクションを参照 (11)。
9 将来展望
- 2026年前半: CSGからの初試験飛行 (2)
- 商業運用開始: 初飛行成功後、ESA Flight Ticket Initiativeによる小型衛星打上げサービス開始
- 第1段再使用の実証: 海上回収・整備・再飛行のサイクル確立
- 欧州独立打上げ能力: Ariane 6/Vega Cに依存しない民間打上げ能力の確保
- 3段構成の展開: オプションのキックステージにより高軌道ミッションに対応
Miura 5の成功は、ESAの「New Space」戦略におけるマイルストーンとなる。欧州は長らくArianespace/ESAによる国家主導の宇宙輸送に依存してきたが、PLD Spaceの軌道投入成功は米国のSpaceX・Rocket Labに続く民間主導モデルの欧州への展開を意味する (12)。