限界と制約
EVMは強力な技術ですが、万能ではありません。 このページでは、EVMの技術的な限界と、避けられない制約を正直に説明します。 これらを理解することで、適切な場面でEVMを活用できるようになります。
できること・できないこと
EVMでできること
- ✓ 微小な動きや色変化の視覚化(定性的な観察)
- ✓ 心拍や呼吸などの周期的な変化の検出
- ✓ 非接触での観察(センサー設置不要)
- ✓ 異常の早期発見(振動パターンの変化)
- ✓ 直感的なコミュニケーション(「見せる」ことができる)
EVMでできないこと
- ✗ 定量的な測定(振幅、速度の数値化)
- ✗ フレームレートの半分を超える周波数の検出
- ✗ カメラが揺れている状態での解析
- ✗ 照明条件が悪い環境での精度確保
- ✗ 専用計測器の代替(精密な振動診断)
ナイキスト制約(周波数の上限)
検出可能な周波数には上限がある 重要
サンプリング定理(ナイキストの定理)により、 検出可能な最大周波数はフレームレートの半分です。 これは物理法則であり、どんな処理でも回避できません。
フレームレート別の検出可能範囲
| フレームレート | ナイキスト周波数 | 検出可能な対象 | 検出不可能な対象 |
|---|---|---|---|
| 30 fps | 15 Hz | 心拍、呼吸、低周波振動 | 多くの機械振動、音波 |
| 60 fps | 30 Hz | 上記 + 一部機械振動 | 高周波振動 |
| 120 fps | 60 Hz | 上記 + 多くの機械振動 | 100Hz以上の振動 |
| 240 fps | 120 Hz | 高周波機械振動まで | 音波領域 |
増幅とノイズのトレードオフ
増幅率を上げるとノイズも増幅される 避けられない
EVMは目的の信号だけでなく、カメラノイズや照明のちらつきなども同時に増幅します。 増幅率αを上げすぎると、ノイズが支配的になり、本来見たい動きが埋もれてしまいます。
- 低い値(α=10)から始める
- 目的の動きが見えるまで徐々に上げる
- ノイズが目立ち始めたら少し下げる
- 周波数帯域を狭くしてノイズを除外する
撮影条件の影響
EVMの結果は撮影条件に大きく左右されます。以下の条件を満たさないと、良好な結果は得られません。
カメラの安定性
三脚は必須です。手持ち撮影では、カメラの揺れがすべてのピクセルに影響し、 目的の微小な動きが検出できなくなります。
照明条件
十分な明るさと安定した照明が必要です。 蛍光灯のちらつき(50/60 Hz)がノイズとして現れることがあります。 LED照明の使用を推奨します。
カメラ設定
手ブレ補正はOFFにしてください。 電子手ブレ補正は画像を動的に変形するため、EVMの解析に悪影響を与えます。 また、露出とフォーカスは手動で固定することを推奨します。
| 項目 | 推奨設定 | 理由 |
|---|---|---|
| カメラ固定 | 三脚必須 | カメラの揺れが最大のノイズ源 |
| 手ブレ補正 | OFF必須 | 画像変形がEVMに悪影響 |
| 露出 | 手動固定推奨 | 自動露出は明るさを変動させる |
| フォーカス | 手動固定推奨 | オートフォーカスは微小なズレを生む |
| 照明 | LED推奨 | 蛍光灯は50/60Hzのちらつきあり |
よくある失敗と対策
何も見えない / 変化が検出されない
- フレームレートを確認 → 目的周波数がナイキスト以下か?
- 周波数帯域を調整 → 目的の周波数が範囲内か?
- 増幅率を上げる(ノイズに注意)
ノイズだらけ / 画面全体がざらつく
- 増幅率を下げる
- 周波数帯域を狭くする
- 照明を改善(十分な明るさ)
- カメラの固定を確認
意図しない動き / 色変化が発生
- 周波数帯域をより狭く設定
- Color/Motion Magnificationを使い分ける
- 蛍光灯照明を避ける(50/60Hzのちらつき)
画面全体が周期的に明滅する
- Motion Magnificationを使用している場合、Color Magnificationに変更
- IIRフィルタの過渡応答が原因の可能性(動画冒頭をカット)
- 周波数帯域を調整
まとめ:EVMを効果的に使うために
- 定量測定が必要な場合は、専用計測器を使用してください
- フレームレートによる周波数上限を理解してください
- 撮影条件(三脚、照明、カメラ設定)を整えてください
- 増幅率は低めから始めて調整してください
これらの限界を理解した上でEVMを使用すれば、非接触での観察、異常の早期発見、 直感的なコミュニケーションなど、EVMならではの価値を最大限に活かすことができます。